予告編がロングバージョンになってから気になりだして鑑賞を決めた。
かつて国民的な人気を博した、九州地方の離島で暮らす子ども達の日常を発信する動画チャンネル(民放の大家族シリーズみたいな雰囲気)。これがとある出来事を機に終了してしまう。
映画の舞台は、その子ども達のうち一人が立ち上げた生配信コンテンツ「#真相をお話しします」。
正体不明の語り手たちが、世間を騒がせた事件について知られざる真相をぶっちゃける。
まるで匿名掲示板に関係者が降臨したかのようなノリで明かされる生々しいエピソードに多くの視聴者が食いつき、劇中の日本では同接100万を超える話題の番組のようだ。
さらに語られた“真相”が面白ければ視聴者から投げ銭が入るシステムまで導入されており、下世話な話で注目を浴びて大金まで得られることから、語り手役に立候補する者も少なくない。
主人公のしがない警備員・桐山も、一攫千金を狙って語り手役にエントリーするが…という話。
原作は読んでいなくて短編集だということしか知らないが、予習ナシでも特に問題なかった。
どのエピソードも殺人事件についての真相が語られる。しかしそれがちっとも怖くない。
そんな理由で、人、殺すかなあ? と首をかしげてしまった。
自分がミステリーを読む習慣がないせいなのか、文章として楽しむものが映像化されたことで変な感じになっちゃったのか、どっちなのかは分からない。
どちらかといえばミステリー要素よりも登場人物のお芝居、とりわけ女性陣にドキドキさせられっぱなしだった。
恋愛リアリティショーでも見てるみたい。
パパ活女子の手管はたいへんスケベで良かったし、チョモ少年の思い出話に出てくる女の子も、2人とも小学生なのにどこか大人びた瞬間をのぞかせる。
とくに教室で2人きりになった凛子ちゃんとのシーンは映画館じゃなければ叫びたくなるほど。
子役含めキャストは皆すごい。のだが、テーマのほうは自分には消化しきれなかった。
この映画の特徴的な部分でもあるのだけど、前半と後半で異なる要素…一つの映画のなかに「娯楽→問題提起→観客を巻き込む」が盛り込まれて途中からテイストを強引に変えられるところは、頭の切り替えがけっこう難しいなと感じた。
①殺人事件も子どももコンテンツとして消費されること。
②それがカネになること。
③消費する視聴者(ひいては観客)に当事者意識を持たせ、現実を突きつけたい意図。
その3つを全部やるにしても、
1)各話の再現VTR部分がよくできているが故にフィクションとして観てしまい、現実の事件を連想しづらい
2)語り手の喋りがこなれ過ぎている。顔バレしないのをいいことに友達や身近な人へ話すような気楽さで打ち明ける様子を表しているのかもしれないが、生配信で一般人がそんな流暢に話せるのか疑問に思ってしまう
3)終盤の警備室でのやりとりにたいして…桐山おまえ警備員だろ!
全体的に「映像演出として一回見せれば説明はしたし伏線にもなるだろう」という見せ方だったが、一回だと印象に残らない。桐山にかかってくる電話だって、バイブでも光の点滅だけでも、もっとしつこく見せていれば彼の焦りも伝わってきただろうに…
なんだか観客をオモテに引きずり出す以前のところで引っ掛かってしまった。
できれば、
「プライバシーの侵害や特定厨のような行為によって、人がネット上に晒されオモチャにされると、どれほど重い事態をもたらすのか」
も、具体的に描いてほしかった気もする。
生配信に集まる外野と映画の観客である我々を結びつけるものはたしかに安全圏からの野次馬根性なんだけど。
被害者側の視点が薄いと感じた。
鈴木と我々を結びつける共通点も描かれていたら、ただのヤケを起こした人って印象にならずに済んだんじゃないか?
言ってもコレは個人の感想なので。
いろいろ盛り沢山な映画なのは間違いない。
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