ふざけた邦題だと思ったが、観てみると文字どおりの話だったから間違っていない。
ゴア表現は実写版『モータルコンバット』より凄かったと思う。
家族と聴覚と声を奪われた男の子が、自らをそのような境遇へと貶めた世界を殴り殺すまでの壮絶な復讐劇。主演はビル・スカルスガルド。身体も眼もバッキバキ。
舞台は世襲独裁で腐敗しきったとある地域。この土地では予め用意されたリストをもとに連行した住民をなぶり殺しにするお祭りが年に一度開催される(生中継でスポンサーもついている)。
このような土地で過去に深い傷を負った主人公を殺戮マシンに鍛え上げるのが、シャーマンと呼ばれる謎の男で、このシャーマンの強さが化け物じみている。
演じたヤヤン・ルヒアンは『スカイライン-奪還-』とその続編でしか観たことがなかった。スカイラインも格好いいけどそれ以上だった。この人なら芝居の演出ではない場面でも人を殺せるのではないか、と思わされる。
シャーマンによる特訓法はまさに地獄で、生き埋めといった復讐に必要か微妙なものや、粗末な食事、未成年の男の子に麻薬とおぼしき煙を吹き掛けるなど、良い師匠とは言いづらいものだった。
成長した主人公も努力のすえ立派な肉体を披露してくれるが、そもそもトラウマが癒えないままなので、意識がボンヤリとしてる描写や幻覚・幻聴に苛まれる場面がちょいちょいある。亡くなったはずの妹が在りし日の姿のまま語りかけてくるところはどういう心理なのか、など、精神科の先生の見解も聞きたいところ。
それから、ストイックな身体とアクションに幻覚・幻聴や周囲の人間のトチ狂ったキャラが合わさったドタバタ劇の一面もあり、ギャップが激しい。
二転三転する展開、とくに後半の流れからは『アーガイル』を思いだした。私がよく知らないだけで、記憶にまつわる筋立ての定石みたいなものがあるのかもしれない。
暴力描写だぜぇヒャッハー! と面白がる目的で観に来たのに、死体の数に若干引きかけたりもした。
しかし、復讐の対象となった一家の長女(とその婿)や長男は、肝心なところに気づかなかった点から見ても救いようがない。父親の不在や母親の思想など複雑な家庭環境なのは想像できなくもないが、それでも母親に従い続けてきた彼らに情けをかける必要はないかなと思った。
だいぶ残虐な方法ではあったが主人公が彼らに手を下す根拠はちゃんと描かれていたのではないか。
この映画の主題は、いちおう、
「全体主義という地獄からの脱出」
を掲げている。
過激な親殺しの物語だと思えば全然悪くない。
私は大好きだ。
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