2025-08-31

20250713 PIERROT「END OF THE WORLDLINE at ARIAKE ARENA」先行上映会

 2025年2月8日・2月9日のPIERROT復活ワンマンを収録したDVDの発売前に映画館での上映会が開催された。7月13日は第1日目の分を上映。
 以前のANDROGYNOS(4月5日・4月6日の上映会)と同様、チケット会社で先行受付が行われたものだが、今回は空席を映画館の予約サイトで購入することも可能に。
 DVDは購入しなかったけれど少しは売り上げに貢献できればと思い上映会のみ行ってきた。私が行った映画館はほぼ満席だった。

 この2月のライブ2日目に、5月の横浜でのワンマンが告知されている。それを知ったうえで観ているものだから、感慨というほどの感慨はなかった。
 それでも四半世紀前に繰り返し繰り返し聴いてきた曲、ライブで見よう見まねで覚えたあの一糸乱れぬ振り付けをやっていると、やっぱり楽しいものだった。

 思い出補正を抜きにしても、今、そうして同じように楽しめるのは、彼らが作り上げた曲が素晴らしいものだからだと思っている。


(追記)
 5月18日、横浜2デイズのうち2日目だけ行った。
 いくつかの上映会やライブを観ていくうちに、PIERROTはもういいかなという気持ちのほうが強くなった。いい意味で。
 現在は他のバンドで活動されていて、そこで作られた曲に触れるとPIERROTとはだいぶ違うのが分かる。こういうことがしたかったのね、と。
 仮に、今、PIERROT名義で新譜を出したとしても、かつての彼らとは同じじゃないのだから、活動の続きとは呼べないものになる気がする。
 であれば、またそれぞれのやりたかった事を今後もやり続けたほうがいいよな、と思った。

 今年はほかにキリトさんのソロから1月の渋谷と7月の代々木、TAKEOさんがいるH.U.Gの8月の原宿のライブを観に行った。
 私はいわゆる「いちげんさん」なのでライブそのものにはノリきれないのだが、PIERROT以後の各メンバーとファンの方々の精神的な結びつき・信頼をしっかり感じられる、素敵な空間を観ることができた。形も名前もある、ちゃんとした愛のある関係性を築けていて、うらやましいと思った。



20250712② スーパーマン

 ヒーローと言えば皆さんご存知、で序盤にくるはずのシークエンスを全部スッ飛ばしたところが豪快だなと思った。桃太郎なら鬼ヶ島に着いたところから始まったような。

 マン・オブ・スティールは観たことあったから「ずいぶん大胆にはしょったな」と驚いてしまったけれど、たぶんスナイダー版…というかDCEUは観なくても大丈夫だと思う。


 ヒーロー映画ってこんな感じというイメージを持てるようになったのはMCUがあったからだ。足の速いやつがいるとか、念力使うのが出てくるとか、鳥がモチーフで空を飛ぶとか、マーベルにもDCにもそれぞれ似た能力を持つヒーローが存在するのも何となく理解した。こんな早いペースで実写化とリブートを重ねていったらネタ被りしてしまわないか?とも思った。

 今回のスーパーマンは被ったというか、あえてMCUのキャラクターや名場面を重ね合わせていたような。

 レックス・ルーサーはアイアンマンになれなかった男として描かれていたと思う。天才で超大金持ちで、自ら開発したマシンでスーパーマンを圧倒し、テクノロジーを駆使したネガキャンでスーパーマンを追い詰め、強大な力を持つスーパーマンは世界の脅威なのだという印象操作は成功して、ヒーローを応援する者は誰もいなくなる。

 この諸々はイーロン・マスクへの当てつけとか風刺なんだろう。しまいには何かウルトロンみたいなやつまで出てくる。


 で、そのウルトロンみたいなやつを今回はどう攻略するのか。

 中東の紛争は誰が止めるのか。

 レックス・ルーサーに一発ブチかますには。


 そういった局面で今回のスーパーマンは、ものすごく現代的なアレンジがなされていた。

 一人しかいないめちゃくちゃ強い男が正義を体現するってヒーロー像を解体してしまった。


 スーパーマンも白雪姫も元のままでいいのに、という人には刺さらないかもしれない。

 アメコミ実写化でいろんなヒーローが出てきて、映画で描ける能力や演出は出尽くしてしまったのかもしれない。犬がいちばん新鮮に見えた。


 ロマンス要素については、独占インタビューのくだりに嫌悪感をおぼえた。野球選手と女子アナが実は裏で付き合ってましたみたいなノリが気持ち悪かった。しかもその場面、やたら長くてイライラする。



20250712① ヘルボーイ/ザ・クルキッドマン

  2019年版も観たのは覚えている。終盤の何かいっぱい出てきたところだけは印象に残っている。あとはあんまり…。どうしてもギレルモ・デル・トロ監督のと比べてしまう。


 今回のは別の単行本からの映像化らしく雰囲気もだいぶ違ったので、前のとは別ものだと思って観ることができた。

 ヘルボーイのビジュがいい。

 鼻筋の通ったイケメンで、モデルみたいな頭身で、素肌に纏ったコートがはだけると胸元が見えるのもセクシーでよかった。

 ヘルボーイに協力することになった人間・トムもヘタレじゃないのがいい。


 陰鬱な雰囲気にとても惹かれた。動物から人間に姿が変わるシーンがすごく気持ち悪くて好き。

 しかし暗い雰囲気を楽しめていたのは最初のうちだけで、画面がずっと暗いままなのは途中から退屈だった。

 やむを得ず降り立った土地で怪異に巻き込まれているから仕方ない、クルキッドマン倒さなきゃいけないのも分かるんだけど、当初の目的はどうした? と思ってしまった。


 とはいえ以前の3作とはベクトルの違うことをしていた作品なので、たぶん忘れることはないと思う。



2025-08-16

20250710 メガロポリス

 予告でちょっと面白そうに見えたから鑑賞しようと思っていた。
 公開から3週でみるみるうちに上映館が減っていって、間に合うかかなり焦った。
 週末を待たずに木曜日のレイトショーにて鑑賞。同じ回の観客は私含め4人しかいなかった。

 古代ローマの歴史とシェイクスピアなどの古典をベースに、昔のSFを混ぜこぜにしたような世界観で、アダム・ドライバーが無双する話。そういえば『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』も紆余曲折を経てアダム・ドライバー主演で作られていたなーと思った。アダム・ドライバーは最後の砦か何かなんだろうか。

 字幕は戸田奈津子。
 あの「~~なので?」といった独特な言い回しを2時間も眺めていると、戸田奈津子ももうかなりの高齢だし、なっち字幕の映画もいつまであるか分からんし、そういう意味では貴重な鑑賞体験なのかも…と思えてきて、一周まわって嚙み締めるように観ていた(内容はさっぱり入ってこなかった)。

 自分にはゆったりとしたテンポ感がかなり退屈に感じられたが、80代で長編映画を作りあげた熱意が凄いのだと思って、頑張って最後まで観た。

 理想郷に描かれた「黄金色にかがやく動く歩道」だって、監督と同じくらい高齢になってから観れば「スゲー発明だ!!」と感嘆できるのかもしれない。

 還暦を迎えるまでこの作品を覚えていられるだろうか。



20250628 F1/エフワン

 知己の頼みでF1の弱小チームに雇われたベテランレーサーが、若手ドライバーと出来立てほやほやの車であれよあれよという間にランキングを上げていく話。

 地面を這うような臨場感溢れるアングルを始めとした物凄いお金をかけたであろう映像をIMAXシアターで楽しんだんだけど、鑑賞後に某レビューサイトでF1に詳しい方の感想を見たら、かなりアメリカ人好みのアレンジがなされているらしいし勝ち上がり方がそもそも有り得ないのだと知った。

 しかも安直な恋愛要素が盛り込まれている。
 これがもし邦画で作られていたら、界隈からご都合展開とかTVドラマでやれとかボロカスに言われていたかもしれない。

 色男の熱い視線を堪能できて良かった、抱かれたい…と呑気に思っていたが、ブラピ(というかハリウッド映画)だから有難がっちゃうところはあるかも。



20250621 Mr.ノボカイン

 感覚がない(と言う割にはチュウとエッチなことはギリギリ感じられるのだが…)たいへん珍しい体質により日常生活に難儀している主人公が、勤務先で発生した強盗事件で人質になった女性を救出すべく「自分の殻を破って」奮闘する話。

 普通なら激痛で耐えられない負傷をもろともせず動ける、という彼の特徴を最大限に活かすためか、アクションシーンはジョン・ウィックのような接近戦がほとんど。
 しかし大口径の銃で撃てばさすがに死んじゃうので銃撃は最低限。「切る」「刺す」「高温のものに触れる」などの見るからに痛そうなシチュエーションが続く。思わず顔をしかめたくなる絵の連続だった。
 痛めつけられるバリエーションが豊富とは言え、ずっと至近距離の攻撃を見せられるのはちょっと飽きた。

 中盤に登場するトラップもりもりルームは、絵的な工夫なんだろうなと思いつつ…あそこまで人体をオモチャにしてしまうと悪ノリ感がすごいというか。主人公が学生時代に受けていたというイジメもきっとこんな感じで行われてたんだろうなと思うとビミョーな気持ちになる。
 けっきょく観客である自分も、俯瞰で見れば、彼の奇妙な体質を当事者の気持ちそっちのけで面白がってる人間の一人なんだなと思わされる。

 ヒロインの出演作繋がりで思い出したプレデターの2作目で、シティハンター・プレデターが自ら怪我の応急処置をする有名な場面がある。
 しかしメチャクチャ強い宇宙人なのに痛がっている様子は印象に残っても、「ぜんぜん痛くないのに痛がらなきゃいけない一般人」ではシュールというか、拍子抜けしてしまった。

 痛そうな描写がいくつも出てくるのにところどころで笑ってしまう、何ともユルいヒーロー映画だった。


20250614③ 国宝

 めちゃくちゃ長い!! と思った。

 一つの作品で歌舞伎の演目を何作も見られるのだからおトク感は強いのだけど……
 その歌舞伎のシーンで最も印象的だったのは冒頭の少年時代キクオを演じた子役の「関の扉」だったし、田中泯に圧倒されたので、話題のメインキャスト二人のことがあまり頭に残っていない。

 この作品を鑑賞するのに向いていないなと痛感した点がある。
 私にはイケメンの顔の区別がつかない。
 そのため、吉沢亮と横浜流星、どっちがどっちなのか観ていて分からなかった。
 互いを呼び合うとか、背中の刺青の有無で「こっちがキクオだな」と理解できる部分もなくはなかったが、大体よく分からないままだった。
 そのどっちか分からない青年のドラマパートと何がどう凄いのか知らない歌舞伎パートが繰り返されるのを長々と見せられてる感じ。

 お恥ずかしいことに女性の登場人物も見分けがつかなかった。
 寺島しのぶも「八犬伝のお百さん(馬琴の妻)と同じようなキャラだな」と思ったら芝居の違いが分からなくなってしまった。

 国宝だけ相性が悪かったのか、それとも邦画を観ることじたい向いていないんだろうか。



20250614② フロントライン

 キービジュアルのとおり、全体的に「顔がいい」印象が強かった。

 昔観た刑事ドラマの劇場版に“現場と会議室”の対比が印象的な作品があったけれど、『シン・ゴジラ』で“会議室”の役人たちは恰好いいイメージに変わった気がする。
 背広組を理想のエリートとして描く作品はそれより前にもあったのかもしれないが、自分が不勉強なため、シンゴジ以前・シンゴジ以後で見てしまう。
 個人的には終始シン・ゴジラのイメージに引っ張られっぱなしだった。

 しかしフロントラインのほうが清潔感は上に見えた。
 スーツは常時ぱりっとしているし、ジャンパーを羽織っている人達だって無精ヒゲがむしろ絵的に映える。
 劇中では悪者扱いだったマスコミ関係者の女性レポーターも綺麗なお姉さんだった。
 マスコミ周辺のことで言えば、逆にネット、SNS、医療従事者の家族への偏見、医療機関へ直接凸をしていた人間のことはナレーションでしか分からず、顔が見えないことが徹底されていた。それで余計に作品全体を通して「顔がいい」という印象が強まったのかもしれない。

 でも顔がいいだけではなかった。
 当たり前だけどアクションシーンはないので、各々が仕事に徹する姿を淡々と見せられるのだけれど、変に盛り上げようとか泣かせようとかせずに(終盤ちょっとだけある)、芝居だけで間を持たせていたのが凄かった。

 実際の出来事を基にしたというのもあるだろう、現場で実際に対応にあたった医療従事者の方々のイメージを良くしたい意図がとても伝わってくる作品だった。