あるとき部内ミーティングがあり、その序盤で部署長が
「この件はAで行く」
と言っていたので、皆そのつもりでいた。
ところが後日、同僚が確認のために部署長へ話しに行くと、どうにも話が噛み合わない。
部署長は怪訝そうな顔で、
「こないだBだって言ったでしょ!」
と言い放ったのだ。
人は年をとると、頭に思い浮かべた事と口から出る言葉が食い違うという謎の現象に見舞われることがある。その部署長も皆の前ではBと言ったつもりで口からはAと発していた。
彼には言い間違えたという意識すらなかった。
この認知機能のバグみたいな現象を、もし人為的に起こすことができたら?
何気ない言葉のやり取りやちょっとした仕草で働きかけて、そうと気づかれないまま他人の言動をコントロールする(部署長にAと言わせる)ことができたら?
あるはずのない景色を相手の脳内にだけ見せることができたら?
それを実現できていともたやすく人を操ってしまう謎の男が現れ、彼を追う刑事が術中にはまっていく、という話だった。
攻殻機動隊のゴーストハックと虐殺器官とパプリカだったら、パプリカかなあと思う。
謎の男を演じているのがウィリアム・フィクナーで、超〜格好よかった。
彼に話しかけられていつの間にか街のど真ん中で服を脱いじゃってたとか、もはやご褒美ではないか。私も騙されたい。
ただ、この、何気ないコミュニケーションで人を操る場面は序盤だけ。
途中からは、相手を普通の命令文でコントロールする人が出てくる。ラスボスとの実力差を分かりやすくするためのようだけど、もうちょっとヒネらんかいとなってしまった。
逆に能力が高すぎるあまり言葉を発しなくても操れる奴まで出てくる。なろう小説の無詠唱で必殺技をくり出す魔法使いじゃないんだから。
さらにハイレベル同士の戦いになると無詠唱VS無詠唱になる。これがただ睨み合っているだけの絵づらでかなりシュールだった。
(じりじり……)
(じりじり……)
(ググッ……)
(ごおおぉぉ……!)
いや何か喋れよ!! と思ってしまった。
とにかく騙されっぱなしで、目に映るものが次の瞬間には全く別の姿をしていたり、どんでん返しに次ぐどんでん返しと、映像面で振り回されるのは面白かったんだけど。
言語によるメンタリズム・バトルももっと観たかった。
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