2023-12-29

20231103② ゴジラ-1.0

 初代は観ておいて良かった。
 -1.0は衣装がなんかペラい印象を受けた。1954年のほうのヒロイン山根恵美子の佇まいや服の仕立てに品があってとても素敵で、その雰囲気を期待してしまった。彼女はええとこのお嬢さんだから比べても仕方ないんだけど。

 事前の告知の監督どうこうは特に気にしていなかった。観る前は、アルキメデス〜くらい戦艦が出てきたら嬉しいな、ドラクエ(未プレイのため展開が早すぎてついて行けない)やルパン(ヒロインの声と脚本が苦手。最後の「いい女になれよ」がすごく気持ちわるい)のような“ビジネス”な感じだったら頑張って良い所を探そう、ただまあVFXが白組なら元は取れるだろう、ぐらいのささやかな期待感だったと思う。
 むしろシン・ゴジラと白組で被ってるところに、見た目にどうやって差別化するのかなあと気になっていた。

 観てみたらシンゴジとはだいぶ違ってた。
 そもそも共有しているものが異なるんだから心配なかった。
 シンゴジは震災と原発と停電の記憶を共有してる現代人狙い撃ちのお話で、それはそれで盛り上がれた。
 -1.0は戦争の話だし、理不尽な暴力としての怪獣が見られた。
 酒が入ると暴れ出す昭和のオヤジみたいな手のつけられなさというのか。
 海上であの面構えのデカい生き物に追いかけられるところなんか、「こんなのと海で遭遇したくないわ」としみじみ思った。

 熱線を吐く前の制御棒を思わせる背びれのギミックも好きだ。
 ムビモンでどうやって再現すんの? と余計な気を回してしまう。

 放射線がどうのというのはさほど意識せず、純粋に暴力と破壊を恐がることができた。



20231103① 火の鳥 エデンの花

 とくに惹かれなかった。

 手塚治虫の漫画に親しんでこなかったのもあってか、思い入れがなくてハマれないというか。

 鑑賞前、一応Wikipediaで火の鳥の記事からざっとあらましだけは目を通しておいた。
 しかし本編で火の鳥が特別何かするわけではない。不老不死という事なら何かあのスライムみたいな変身できるやつのほうが不老不死だった。

 映画のタイトルが、どちらかと言えば楽曲や小説に題名を付ける時のようなアプローチなんだと思う。
 そこへミリ知らの人間が観に行って「え、火の鳥これしか出てこないの? 画面横切っただけじゃん」となってしまった。私が想定される客層ではなかっただけだ。
 作品の良し悪しとは関係ないところで個人的にモヤモヤを感じたけれど、火の鳥の重要性ってポイントはきちんと押さえてあったんじゃないかと思う。

 壮大だし人間の業を描いていたのは分かった。
 それはそれとして、映画館でわざわざ人間の業だけ見せられても
「分かってるよ、だから何だよ」
としか思えなかった。

 昔の作品の映像化って、出たての時にどれだけ新しいものであっても、その作品から影響を受けた人達の創造したものが間にあるわけで、後者をたくさん目にしてきた側からすれば凄さが分からない。

 たぶん自分は手塚漫画を読んでも感銘を受けないのかもしれない。
 少なくとも本作を観て漫画も、とはならなかった。




2023-12-28

20231028② シン・ゴジラ:オルソ

 都内でゴジラが飾ってある映画館のうち新宿のほうで観た。

 白黒になったことで印象が変わって、自分はどちらかといえば見づらさを感じた。

 1954年の初代ゴジラをDVDで観たことがあって「白黒映画=古い時代のテクノロジー」というイメージが先にあった。そこへオルソの特に冒頭部分、最近のガジェット片手に撮影しながら楽しげに避難する若者のシーンや、動画投稿サイトっぽくコメントが横スクロールする映像などまでモノトーンにされてしまうのが、どうにもすわりが悪くて変な感じだった。
 それと、前半の閣僚会議パートのモダモダした展開も、色がついてないと結構かったるいモンなんだなと思った。

 ではダメだったのかというと全然そんなことはない。

 基本ゴジラが出てきた場面は全部かっこいい。
 映像の作り方のことはよく分からないけど、構図? がもともと良いとかそういう事なのかもしれない。
 熱線吐いた場面はちょっと神々しさすら感じた。

 それはそれとして、やっぱり色はついてた方がいいなと思った。



2023-12-04

20231028① SISU/シス 不死身の男

 奇しくも上映前の予告が金カムだった。
 そういえば白い粉をキメた熊さんが人を襲う映画の時もそうだった。

 ロシア人と戦ったことがあり、異様な強さと生きることへの執念深さから「不死身」とあだ名され、軍服を纏ったむくつけき野郎達と金塊のうばい合いをくり広げる、強さの質がもはや荒唐無稽な領域で90年代の筋肉映画を彷彿とさせる──フィンランドが舞台の作品。

 「ナメてた相手が実は物凄く強い◯◯だった!」系だけど、敵がナチス、ジャンル映画のフリー素材的な記号じゃない、ちゃんとしたナチスで……彼らもなかなかしぶとく、最後まで善戦したのが良かった。
 リアリティは無視、とにかく映像でフィンランド男のSISUを見せつけるぞ、なんなら女も強いんだぞ、と。

 思わずナイスファイト! と言いたくなる映画だった。



2023-11-27

20231027 ドミノ

 以前勤めていた会社で、ちょっとしたトラブルが起きた時のこと。
 あるとき部内ミーティングがあり、その序盤で部署長が
「この件はAで行く」
と言っていたので、皆そのつもりでいた。
 ところが後日、同僚が確認のために部署長へ話しに行くと、どうにも話が噛み合わない。
 部署長は怪訝そうな顔で、
「こないだBだって言ったでしょ!」
と言い放ったのだ。

 人は年をとると、頭に思い浮かべた事と口から出る言葉が食い違うという謎の現象に見舞われることがある。その部署長も皆の前ではBと言ったつもりで口からはAと発していた。
 彼には言い間違えたという意識すらなかった。

 この認知機能のバグみたいな現象を、もし人為的に起こすことができたら?
 何気ない言葉のやり取りやちょっとした仕草で働きかけて、そうと気づかれないまま他人の言動をコントロールする(部署長にAと言わせる)ことができたら?
 あるはずのない景色を相手の脳内にだけ見せることができたら?

 それを実現できていともたやすく人を操ってしまう謎の男が現れ、彼を追う刑事が術中にはまっていく、という話だった。
 攻殻機動隊のゴーストハックと虐殺器官とパプリカだったら、パプリカかなあと思う。

 謎の男を演じているのがウィリアム・フィクナーで、超〜格好よかった。
 彼に話しかけられていつの間にか街のど真ん中で服を脱いじゃってたとか、もはやご褒美ではないか。私も騙されたい。

 ただ、この、何気ないコミュニケーションで人を操る場面は序盤だけ。
 途中からは、相手を普通の命令文でコントロールする人が出てくる。ラスボスとの実力差を分かりやすくするためのようだけど、もうちょっとヒネらんかいとなってしまった。
 逆に能力が高すぎるあまり言葉を発しなくても操れる奴まで出てくる。なろう小説の無詠唱で必殺技をくり出す魔法使いじゃないんだから。
 さらにハイレベル同士の戦いになると無詠唱VS無詠唱になる。これがただ睨み合っているだけの絵づらでかなりシュールだった。
(じりじり……)
(じりじり……)
(ググッ……)
(ごおおぉぉ……!)
 いや何か喋れよ!! と思ってしまった。

 とにかく騙されっぱなしで、目に映るものが次の瞬間には全く別の姿をしていたり、どんでん返しに次ぐどんでん返しと、映像面で振り回されるのは面白かったんだけど。

 言語によるメンタリズム・バトルももっと観たかった。





2023-11-25

20231020 ザ・クリエイター/創造者

 予告は、人と機械に芽生えた愛と感動の物語みたいな雰囲気。
 本編は、割としっかり命を奪う。
 予告で“ノマド”を伏せる意図は分かる。ただ、愛の物語のほうを目当てに観に行った人がいたら……その人がもし、人が傷つく描写が苦手だったら……と思うと、ちょっと気の毒な気持ちになった。

 いやAI搭載ヒト型ロボットの生命って何だよってなるんだけど、姿かたちが人間のそれに非常に近いから、機能停止させた時の命を奪った感が強い。

 お話は何かローグ・ワンとブレードランナーを足して2で割ろうとしてエリジウムができちゃったような印象を受けた。
 スター・ウォーズを一言で説明するとなって「スター・ウォーズとは、デス・スターを壊しに行く話です!!」で押し通されてしまったような。
 そこじゃねえだろ、となってしまったのは、多分、力の象徴と言うべきものにどう立ち向かうか「まで」しか描かれなかったからだろう。
 この人達この後どうすんのかな、分断のその先をどう見せたかったんだろう、と思うと何か物足りなかった。

 あと、アジアに夢を抱きすぎな気もする。
 作った人はアメリカ人にたいする嫌悪感でもあるんだろうか。俺はアイツらとは違うんだ、立場の弱い人達の気持ちが分かるんだ、的な。ギャレゴジもだけど監督さんは人間に対して潔癖症でもあんのかな。

 主題には何かビミョーなものを覚えたが、映像はかなり好きなやつだった。
 理不尽な暴力をこれでもかと見せてくる(臨場感も凄いがそのぶん爆弾と銃撃の音がかなりうるさいとも言える)。
 同じ型のアンドロイドは顔も同じなため共通の役者が演じている点だとか、地上から見上げたノマドの子宮のようなルックスとか、動力源どうなってんのってなる静けさとか、ちょっとした乗り物のウェザリングなんかも、細かいところまでこだわっているのが見えて良かった。
 特に死亡者のいまわのきわの記憶を語らせる装置に至っては、思いついた人の正気を疑いたくなる。人の心とかないんか?

 いろいろなメカ描写には魅力を感じたので、2周目いってもいいかなと思った。
 でも、目がめちゃくちゃ疲れたから当分はいいです。



20231014 宇宙探索編集部

 UFO・オカルトブームが過ぎ去り廃れてしまった雑誌『宇宙探索』の編集長が、とある動画を知って「これは」となり、周囲の反対を押し切って現地取材へおもむくという話。ジャンルは何だろう。ロードムービーだろうか。

 なんでも鑑定団に地方の公民館とか市民文化センターみたいな所で開催する出張鑑定コーナーがあるけど、自信満々でエントリーして肝心の鑑定結果はお察し、ってパターンがちょいちょいある。この編集長からも似た空気を感じた。不器用だが純粋な男性といえば聞こえは良いんだろうけど、知っていることに偏りがある印象だし、自身の夢が絡むと途端に冷静さを失う。

 出版業界を知らない自分から見たら、雑誌の編集部、ましてや編集長なら、勉強はできて当たり前で、博識で、常に最新の情報を仕入れていて、取材でさまざまな人と接する機会があるから対人スキルもきっと凄くて……なんてイメージがある。
 作中の編集長は、何かいつもボソボソ喋ってて、暗い。普通の人と相容れない部分があり、コイツ何考えてんだかさっぱり分からん、みたいな。

 最後も(主に編集長だけが)「諦めなくて良かったぁ〜」となっていた。
 もうここまで来ると、いやアナタがそれで良いならもういいよ、これも多様性よね、と、観る側も諦めの境地にたどり着く(笑)。

 最後までこの人のことは理解できなかったし、彼も他者に歩み寄ることにはどこか疎いまま終わってしまったが、分かろうとしてもなかなか理解できない・簡単に真理には至ることができない、そういうものがそのままここに在るって意味であれば、まさしく目の前に宇宙があったなあ、と思えなくもなかった。

 話よりむしろ中国のローカルな風景を見ているほうが面白かった。
 都会からの鉄道での長距離移動に、地方都市、普通に人が暮らす町並み、田舎の風景、山に囲まれた絶景、秘境(?)まであって見応えがあった。



 土日のどこかで観るつもりで前売券にしたら、行こうとしていた吉祥寺の映画館はネット予約に前売券が使えなかった。
 それで当日早めに出ようとしたのに、こういう時に限って朝からいろいろ起きるもので、着いた頃には座席が残り半分になっていた。

 時間をつぶすために初めて井の頭公園に行ってみた。
 愛犬家のオフ会のような集まりがあったようで、高そうな犬がいっぱいいた。


 
  

2023-11-22

20230930 コカイン・ベア

 実話から着想を得て作られているそうだが、共通しているのは「違法な薬物が飛行機から山に落とされたこと」「その薬物をクマが摂取してしまったこと」のみらしい。
 実際には人を襲ったという話はなく、被害に遭ったのは薬のせいで死んでしまったクマだけなのだと、どこかの記事で読んだ。

 〜〜から着想を得た、と言われてクマが出るとなればもう、インターネットに毒されてきた世代としてはウィキペディアの羆のページを脊髄反射で思い出す。人のほうにも犠牲者が出た痛ましい話を知りながら、「リミッターが外れたクマ」というシチュエーションを前にするとものすごく興奮してしまう。映像の中だけなら純粋な暴力行為がどこまでも許されると思っているフシがある。

 こういうの大好き! という人にとっての大好きなもの詰め合わせだった。

 明るい山中なのにとにかく恐い。森の中に一瞬姿が見えるだけで恐い。でも時々かわいい。地面に白い粉がブチ撒けられているのが見つかれば何処かに潜んでいるんじゃないかと不安になり、姿を現す前からもう恐い。突進してくるところなんか死を覚悟するくらい恐い。でも時々かわいい。恐いのが快感になる。何だろうこの気持ち。

 ただ、前半の(これからクマに襲われるであろう)登場人物が出揃うまでのドラマパートは、まあまあ人数がいるので辛抱強く待たなきゃいけなかった。

 この作品、時間の都合で初めて新宿のトーホーで観ることになった。ゴジラの頭が生えてる所だ。
 あの辺はこわい所だと聞いていたから今までずっと足を踏み入れたことがなかった。
 行ってみたらとても活気があり、思っていたより居心地がよかった。






20230922 ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!

 タートルズといえば小学生の時ちょうどテレ東の水曜18時台で放映されていて、カメ達の活躍そっちのけで「シャワキチャン!!」を連呼しまくった記憶がある。

 スパイダーバースとはまた違った色彩と見せ方で楽しめたが、とにかく、目が疲れた。
 冒頭から何かチラつくような、カクカクしてるような強い違和感があった。後になって意図的にフレームレートを落とした映像だったことを知り腑に落ちた。スクリーンが大きければ大きいほど一コマ一コマを全力で目で追ってしまうのかもしれない。眼精疲労が酷すぎて翌日まで頭痛が続いた。

 カメ達はおバkわんぱくかつ好奇心旺盛で、目線の高さを完全にキッズに合わせたところに好感が持てた。
 映画ではカメ達だけではなく、彼らを保護したスプリンターの視点も並行して描かれる。全体的に子供向けでありつつ大人が観るとそれはそれで感じ入るものがある。
 かつて「シャワキチャン!!」を連呼していた元キッズの中には、今やスプリンターと同じく子どもを育てる側に回った方もおられるだろう。終盤で彼が子離れする瞬間には、何かしら思うところがあるかもしれない。

 構成は伏線のお手本みたいな流れだった。
 仮にひとつの映画が2時間くらいあったとして、登場人物やエピソードの数って一度に覚えられる量に限りがあると思う。ミュータント・パニックはそこのボリューム感がとても丁度良かった。

 アクションは思っていたよりジャッキーしてた。

 同じテレ東、水曜、18時半のビーストウォーズは子供時代に見たものと記憶していたが、調べてみたらその頃すでに中学生だった。
 私の頭は小学生から成長していない。



2023-11-20

20230915 グランツーリスモ

 好きなブロムカンプ作品はエリジウムです!
 よろしくお願いします!!

 本当にブロムカンプ監督が作ったんだろうか? と何度も名前を確認してしまった。
 南アフリカも、きったねえ街並も、貧困層も、シャールト・コプリーも出てこない。
 でも面白かった。

 実在するレーサーの伝記映画ではなくて、原作ゲームの伝記映画だった。
 昔少年マガジンの読み切りでバイオハザードの開発物語とかあったなあ、なんて思い出した。
 バイオではどうか分からないが、たとえばリアルなFPSをやり込んで特殊部隊に入った人なんかもいるんだろうか? そう考えてみると、実際のカートやレーシングカーの経験がほとんどないまま本物のレーサーになるチャンスを掴んだ彼と、その彼を育てた原作ゲーム、どっちも凄いなあと思う。

 で、映画は少年マガジンの読み切りよりも王道の少年マンガしてた。ヒロインがちゃんと美人で、主人公がヒロイン一筋だったのも少年マンガっぽい。ブレない男の子っていいなあ。

 ただ、あまりにもまとまりが良すぎて、ほとんど作り話の領域に入っているように感じた。
 よく知らないけどそうとう脚色されているんじゃなかろうか。
 面白かったからいいけど。




20230909 ドラキュラ/デメテル号最期の航海

 9月9日は、前年の夏に上総一ノ宮の玉前神社で授かった御守を返納すべく参拝を予定していたが、台風の影響で鉄道が運休となってしまいリスケに。

 ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』は以前読んだことがある。
 漂着したデメテル号から発見された船長の遺体の異様さ。
 航海日誌をひもといて見えてくる乗組員の絶望的な状況。
 最後は誰も助からない。
 原作既読でこの章が凄惨な結末を迎えるのを知っていたから、映像化したらさぞかしシンドイことになるだろうと興味がわいた。

 映像になると、海に囲まれ逃げられないことを強く意識させられた。
 当たり前だけど舞台はずっと船の上。
 それと本編の7割くらい画面が暗い。昼間のパートもあるけどほぼ夜。
 ある意味ぜんぜん代わり映えしない景色が続くのに、夜ごと誰かしら殺されるものだから、一人また一人と消えていく船員の顔を思い出しては「また夜が来るのか」とどんよりした気分になっていく。
 怪物はどこから襲ってくるか分からないし、突然でかい音でビックリさせる演出が多用されているのもあって心臓に悪い。
 いつ来るかいつ来るかと体を強張らせてしまい、思いのほか消耗した。

 精神的にも肉体的にも疲弊しながら、それでも勇敢な船乗り達が得体の知れない何かに立ち向かっていく。
 後半は原作に則っていない部分も多々あるんだけど、なにぶん原作既読勢にとっては彼らの抵抗はそのまま助走つけて全滅しに行ってるようにしか見えず、足掻けば足掻くほどむしろオイシイという不思議な感覚で観ることになった。

 ドラキュラの見た目は好みが別れるかもしれない。狡猾さ残忍さに全振りしてて全然イケメンとかじゃないから(笑)
 ああいうビジュアルって、信心深い人や神話を嗜んでいる人には恐ろしい悪魔に見えるんだろうか。
 自分はそういうのに疎いせいか、ナメック星人みたいだと思ってしまった。





20230825 MEG ザ・モンスターズ2

 鑑賞中すっごく長いように感じた。
 調べてみたら116分だった。
 体感130分以上あった気がした。

 深く考えずアトラクション的に楽しめるものは大好きだ。
 特に中盤の海溝パートの情け容赦なさといったら、観ているこっちまで息が止まりそうだった。海上に舞台を移しても(その後も阿鼻叫喚のシーンが続くにも関わらず)、酸素があるだけ良いじゃんと思ってしまう。

 しかし今回は陸に上がっても安心できない。
 なんなんだあの生き物は。
 サメもまあパクパクと人をよく食べる。
 超でかいから基本丸呑みで流血描写がむしろ少ないのが印象的だった。

 ステイサムや共闘した人達が異次元の強さのため忘れてしまいそうになるけど、彼らはフィジカルの強さだけではなく、敵をよく見極めて行動する冷静さも持ちあわせている。
 早い段階で命を落とした人達に足りなかったものが割とハッキリしているのもおもしろかった。

 アクション超大作でありながら、生き延びるために大事な普遍的なこともちゃんと提示されている……かも。







2023-11-19

20230812 バービー

 感想をどう述べたらいいか頭を抱えるタイプだった。
 自分はアンフェのケがある(なんていうか「だから女はダメなんだ」と結論づける性格傾向を自覚している)から、感情を噴き出さずに書けるかどうか。

 アリかナシかで言えば、ナシだ。

 予告をちょろっと見て、どピンク・ど派手な舞台のインパクトにやられて「ぜひ観たい」と思っていた。
 予告に釣られて観てみたら、コメディっちゃコメディだけど、なんか騙された気分。下調べがおろそかだった自分が悪いんだけど。

 まあ主演がマーゴット・ロビーだからもしかしたらソッチ系かもなあとは身構えていた。
 実際その通りの展開になってしまい、最後まで観ていられず途中リタイアした。よってオチは知らない。

 途中まで観て覚えているのはここまで。
 神話でいうところの天界や黄泉の国のように、人間界と繋がり相互に作用しあう人形の世界がある前提。
 毎日ハッピーに暮らしていた人形の一人に異変があらわれる。自身の変化を何とかしようと人間界へ乗り込んだ彼女は、人間界のトンデモナイ男社会を目の当たりにする。さらに彼女の異変は「心身の老いから精神的に不安定になっていた中年のオバサン」のせいだと分かる。
 この騒動は双方の世界における男女のパワーバランスが崩れる事態を招き、どちらの世界もめちゃくちゃになっていく。

 これ系の映像作品でたびたび取り上げられる「男のバカバカしい生態」みたいな描き方がものすごく苦手だ。
 わざわざ映像にして「コイツら、変だよね」とやられて浮き彫りにしてやったぜ感を出されても、スゴイ発見だとはならないし感心もしない。映画ではなくヘタウマ系の絵柄のコミックエッセイでやれよと思う。
 少なくとも私が好きな・尊敬する女性から思い浮かべる人達は、男性をこんな見方では扱わない。

 途中で退席したのは映画の内容だけが理由ではない。
 実は隣の席に上映からずいぶん遅れて入ってきたカップルがいて、鑑賞のしかたがアレ過ぎて嫌になってしまったのもある。
 入場する時間は自由なので気にしないが、男性のほうがかなり具合が悪そうで、気が散って仕方なかった。
 男性は何度も座りなおし、ハンディ扇風機を使って体を冷し(スイッチ入れるとLEDランプが点くタイプで気になる)、ビニール袋を抱えて今にも吐きそうな様子で身をかがめていた。
 そこまでシンドイなら無理に観なくていいだろうに、と呆れてしまったが、隣の彼女はといえば映画に夢中で彼の様子などまるでお構いナシだった。

 内容はいかにもマーゴット・ロビーが好きそうなやつだし、隣はそんなだしで、何かもう見ていられなかった。

 着せ替え人形の話だからといって、間違っても女児の目に入らないよう祈るばかりだ。


 バービーは不快だったとはいえ、世の多くの女性から見たら私のほうが人でなしだ。
 共感能力がなく空気が読めず、そこら辺の同性のように女性どうしで連帯することもできず、他者を受容するとか、いわゆる母性? 利他的な行動をとれるという意味での女性らしさがカケラもない。
 だから、何を言ったところで、私が毛嫌いしている女性のほうが価値が高いというか、正解だし、人としてマトモだと思う。
 「だからお前はダメなんだ」と言われたら返す言葉もない。

 そのへんは受け入れなきゃなあ、と思った。



20230810 トランスフォーマー/ビースト覚醒

 字幕で観たが、これに限っては吹替版で観たほうが良いかもしれない。

 ビーストウォーズはテレビアニメが直撃した世代だ。弟と一緒に見ていた。テレ東の水曜18時半から放送していたと記憶している。
 当時は声優という職業についてよく知らなかったため、「なんか会話のテンポがいい、面白いロボットアニメだな」と思っていた。
 それまでにもロボットアニメには馴れ親しんできたほうだったが、ビーストウォーズは子供の目からしても異色な存在だった。敵対勢力と戦う主旨は普通の勇者系ロボットアニメと同じだが、各話完結で悪者をやっつけるというより、毎週見続けないと把握できないドラマの部分が難しいイメージ。
 CGアニメであることや動物からロボットへの変形は違和感がなかった。これはタマゴラスで遊んでいた影響が大きい。

 かつてテレビで見たそのアニメと、ニコニコ動画で「声優無法地帯」「イボンコ」「俺のエビチャーハン」でゲラゲラ笑っていた思い出もあり、吹替版で頭が混乱するくらいなら字幕でいいか、と思った。

 ところが、字幕版は存外分かりづらかった。
 別に字幕の内容が変だとか役者の演技が変だとかいう話ではない。
 トランスフォームや戦闘の描写がかなり盛り沢山なおかげで、人間サイドのエピソードが薄いような。特に主人公の心境の変化が、「いつのまにそう思うようになったの?」と首をかしげてしまう時がちょいちょいあった。声優さんの演技で補強されたものを観たほうが分かりやすいのではないか? と感じた。

 あと、機械生命体はいかんせん機械なものだから、何らかの攻撃を受けて停止しても、死亡なのか瀕死の重傷なのかよく分からない。どう受けとめたらいいのか反応に困る部分はちょっとあった。

 反応に困ると言えば「人間もビースト達とともに戦う」をあのように見せるところは、うわぁ賛否が別れそうだなあと心配になった。私などはザ・プレデターを思い出しちゃって……いやザデターは好きな作品だしああいうオチも嫌いじゃないけど……
 ビースト〜は、アレのデザインもうちょっと何とかならんかったのか。
 ツイッターをやめてしまったので他の人の反応は分からない。でも、もし人と話していてこの話題になったらすごく気を遣いそう。

 バンブルビーのところは良かった。





20230714 君たちはどう生きるか

 千と千尋〜をパワーアップさせたようなやつだと感じた。
 女の子が夢みたいな世界でちょっと成長して、「戻りたいし、戻るのが当たり前だから日常に帰っていく」のと、男の子が一冊の本を読んで自分を顧みた上で「夢みたいな世界を提示されても自ら戻ることを選んで日常に帰る」の違いはあるものの。

 映像は何か凄すぎてリアクションができないクオリティだった。一周まわって「ふーん」となってしまうような……生きてるうちにこんな光景見ちゃって良かったんだろうか。

 前情報ナシでいきなり鑑賞したが、もし予告でその「ふーん」になっていたら観ていたかどうか分からない。
 物語も淡々としている。
 物語にできるのはここまで、と線引きされているような。
 あっちの世界の風景はいくらでも創れるし見せてやれるよ、でも見せてやったところでお前が生きてるのはその現実なんだよ、と言われた気がした。(いや創って見せてやれるのが凄すぎるんだが)

 ジブリ映画はいい表情したジジイとババアがたくさん出てくるところが好きだ。
 なんだかんだ言って、現実のジジイとババアが可愛い世界なら帰って来たいと思えるのかもしれない。

 宮崎駿監督が描くジジイとババアがこの先見られなくなるのは残念に思う。





2023-11-17

20230701 (吹)スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

 6月30日から7月1日にかけて、仙台に一人旅に行ってきた。
 仙台パルコの中にあるトーホーシネマズで観たが、どこに行ってもパルコはパルコだしシネコンはシネコンだった。

 前作は運よく3D版(字幕)を観ることができ、映像にものすごく圧倒された。それは良かったのだけど、すごすきて内容が飲み込めなかった。それで後から吹替版も観ている。ピーター・B・パーカーがよかった。タツノオトシゴのくだりの情けない感じが好きだ。

 スパイダーバースは前作も続編も有名な声優さんが沢山出てくるけれど、「ああ、あのアニメの◯◯役の!」というふうに他の作品に引っ張られることなく楽しめた。

 それはそれとして、字幕で観ても吹替で観ても「そこで終わるんか!」となるラストだった。
 また来週〜みたいなテンポ感だったけど、次回作まで覚えていられるだろうか。




2023-10-20

20230623 (字)スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

 前作のスパイダーバースは
「マンガが動いてる! 凄い!」
という小学生みたいな感想だけ覚えている。

 そういえば主人公が黒人だが、そのあたりは特に意識せず観ていたことに今さら気がついた。
 主役の色がこれまでと違う人魚姫と何が違うのか考えてみると(格ゲーの2Pカラーみたいに言うな)、そもそもマルチバースもので「いろいろなスパイダーマンが出てくる」のが前提のお話だからってところで受け入れていた気がする。肌の色がバキッと変わっていたほうがむしろ「いろいろ」の振り幅の大きさを感じられて好印象に映ったのかもしれない。彼“だけ”ではないんだ、みたいな。

 続編はマンガが動く感じこそ薄まった気がするものの、もはや作画なのかCGなのかどんだけ手間暇かけて作ったのか想像もつかない映像が延々と続く。これを中高生のときに観たら他のアニメでは満足できない体になりそうだな、などと要らぬ心配をしてしまった。

 あらゆる舞台にそれぞれ1人ずつ存在する彼らが一堂に会すると、コスチュームや造形が違うどころか、2次元のキャラも3次元のキャラも、現実の自分が映画館で観た俳優まで、同じ画面に収まる。そこが観ていてとても不思議だった。
 彼らはお互いをどのように認識しているのだろう?
 私はいま4次元の世界にいて(多分そのはず)、3次元や2次元のコンテンツを楽しんでいる。でも、もし対象が5次元、6次元……と高次元になっていったら、まず今ここにソレがあるのか無いのかすら分からない。
 高次元の存在といえばスピリチュアルな話題にご興味のある方には身近なものかもしれないが、私にはソレを感じとることはできない。もし高次元の存在がホントにいるなら、なぜ私の人生をこうデザインしたのか問い詰めて一発ぶん殴ってやりたいくらいなんだが。

 作中の2次元キャラが3次元以上のキャラを「見る」ことが可能なのだとしたら、スパイダー・ソサエティのテクノロジーって相当なものなんだろう。

 そんな超凄いテクノロジーで集められた彼らだけれど、運命とか共通するストーリーに縛られている。逃れられないというか「変えてはならない」らしい。

 映画じゃないけど『白鳥の湖』でジークフリート王子がオデットに愛を誓いながらオディールに心奪われるのだって、どの版でも変わらない。
 観るほうはこの必ず訪れる不幸、王子が落ちる瞬間を、コレがないと始まらないよなぁ! と楽しみにさえしている。
 その人生を歩まなければならない、同じ事を繰り返さなければならない人間からすれば堪ったもんじゃないだろう。
 高みの見物してんじゃねぇ、と叫びたくなる時だってあるんじゃないのか。

 マイルズ・モラレス君はそういう不幸を見て見ぬふりができなかったんだろうな、ヒーローである前に一人の優しい男の子なんだなと思った。

 次回作も楽しみだ。

 マハーシャラ・アリも出そうだし。



2023-10-17

20230616 ザ・フラッシュ

 エズラ・ミラーってファンタビのクリーデンス役しか知らないけど、クリーデンスの印象が良かったので、他の作品に対しても「この人が出るなら観ようかな」と思える。
 アメコミヒーローものの実写映画は、ユニバース展開されてから最初のうちは、あまり真面目に追っていない自分でも結構楽しんでいた。今はもう全然分からない。ブレイドも単独作にして欲しかった。マハーシャラ・アリも好きなんで、他のヒーローの見せ場作るくらいなら彼を前面に出して欲しかったなあ、みたいな。
 どうも自分はコミックのキャラや壮大なストーリーよりも、好きな役者さんを見たい気持ちのほうが強いのかもしれない。
 とはいえ、好きな役者さんが出るのは嬉しい半面、演じるキャラクター以上のことができないイメージもある。むしろ特定のキャラクターに起用されることでパブリックイメージを固定してく感じというか、この俳優の売り込み方ってそうなんだ〜みたいなイヤらしさを見て取ってしまうが考えすぎだろうか。
 ユニバースありきで「俳優の誰々が向こう3作品の出演に契約」とか、先に言われてハラハラドキドキできるか? ともなるし。

 話が逸れてしまった。
 作品じたいの出来は、いま思い返すとなんか途中から予算的な意味で悲鳴が上がってそうだなって感じはした。
 スピード感は普通に速いなーって思った。でも足が速いキャラって他作品にも必ずいて特技が被るから、絵的に差別化図るの大変そう、映画にするならもっと間をあけないと飽きられそう、などと余計な心配がよぎる。
 あとは観ながら「失われた大切なものは取り戻せないって主題とマルチバースの相性って正直どうなんだろう」とか考えていた。時間の速さと重さをいっぺんに感じさせようとしたら2時間強の映画じゃ描ききるのはちとキツそうだった。そういうのは小説のほうが得意なやつだろう。

 それはそれとして、エズラ・ミラーで撮った分でちゃんと公開してくれて良かったと思っている。神経が過敏そうな感じがやっぱり好きだ。
 映像作品は非日常として現実から切り離されて存在しているのだから、現実の犯罪からも切り離して受けとめたい。けど、人の気持ちはそんな簡単に割り切れるものではないだろうし、経済活動である以上難しいんだろうなとも思う。
 この内容で他の役者さんだったら観たいと思っただろうか、と考えると、自分は否だけど。

 グリンデルバルドもジョニデで続けて欲しかったなあ。


2023-09-18

20230610 リトル・マーメイド

 アニメのほう見たことないけど、話のタネに観に行ってみた。

 公開前に予告を見た段階での所感は、
「ディズニーってポリコレのイメージが定着した気がするけど、今もプリンセスもののリバイバルとかやるんだ?」
だった。なぜ今? という。
 姉妹たちはさまざまな人種が揃っていたけれど、その絵づらが政略結婚のように見えてしまう。主人公よりがっつりアフリカ系の真っ黒い姉なんかもいる。これだと、その……女がよりどりみどりに見える……却って良くないのでは……。
 あとヒロインの子の顔がウィル・スミスに似てると感じてから、そうとしか見えなくなり落ち着かなかった。

 で、実際観てみたら、歌はたしかに上手かった。
 ただ主人公の肌の色が変わっただけで、内容は普通のプリンセスもの。(白人じゃなくてもお姫様のように扱われる希望があるって意味では一部の女児にとっては夢のある話ではある。じゃあ結局べつの需要を掘り起こしただけなのか? ともなるけど)

 印象に残ってるのはヴィラン側の棲み家がキレイだったことくらい。

 アニメのほうはどうなのか知らないが、ラストに
「彼らが種族の違いを超えた架け橋になりますように」
の様なメッセージと思しきシーンはあった。

 それも何か取って付けたような感じがしてしまって、特にハマるでもなかった。



2023-09-13

20230604 クリード 過去の逆襲

 予告が面白そうで気になっていた。

 しかしこれまでロッキーは一つも観たことがなかった。お笑い芸人がコント番組でコスる作品の一つ、くらいの認識しかなかった。
 せっかくの機会なので思いきってイチから観てみた。

 ロッキー、初見の人の率直な感想を申し上げると、非常に言いにくいのだけど、エイドリアンの良さが全然分からなかった。こんな女のどこに惹かれたんだろう、根暗だと逆にしっくりくるのだろうか? と。彼らが付き合いだして見た目に垢抜けてきてからは好きになったけど。いつボクシングが始まるんだろうか、と待ちくたびれそうになるくらい2人のパートが長いのも意外だった。
 それはそれとして終盤の盛り上がりが凄いおもしろかった。もっと早く観とけばよかった。

 クリードの過去2作も観た。
 入場パフォーマンスが本場って感じで楽しい。

 最新作は結構ウエットなものを殴り合いに込めていて、こんな切り口で「男」を語るのもアリなのか〜って驚きつつ、何やかや楽しんだ。

 新時代はちょっと分かんない。



20230602 65/シックスティ・ファイブ

 アダム・ドライバーが大変な目に遭うシチュエーションが好きだ。


 今より数千万年前、どこかの銀河にある惑星で始まる物語……の割にはバリバリ英語喋るから、そういうテイで! を受け入れるまでに少し時間を要した。

 全体的にはアダム・ドライバーが大変な目に遭っているので普通にたのしかった。

 画面が、でかい生き物、でかい虫、でかい音で埋め尽くされていて、少し前進してはピンチ!驚きの展開!また少し前進してはピンチ!驚きの展開!……がひたすら続く。

 この一本調子が人によっては退屈に感じるかもしれない。


 面白いは面白いけど、劇場でやったら「これは配信待ってもよかったかな」とか言われてそうだし、もし配信限定だったら「劇場公開でも良かっただろうに!」と惜しまれていそうな気もする。劇場か配信かのボーダー上にあると思う。


 平日の昼過ぎに再放送していたら、

「あっ、気がついたら何となく全部みちゃってた」

ってなりそうな、そういう意味でちょうどいいのが好きな人にはアリなやつ。



20230502 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

 前提としてこのゲームのシリーズどれか一つでも楽しんだ経験がないと良さが分からない気がする。

 TVゲームにそこまで馴染みがない、マリオもほとんどやったことがない自分には、正直観るのがしんどかった。

 キャラクターの性格が苦手。
 とくに主人公が情けなくて受けつけない。普段の仕事ぶりの不甲斐なさと、そういうゲームだから仕方ないけどアイテムに頼らないと何もできないところが、見ていていい気分がしない。
 敵の描き方もイマドキが過ぎるというか。独りよがりな態度(有害な男らしさとかいうアンチ体育会系のノリ)を子供向けコンテンツで扱うのが何かちょっと気持ちわるい。
 こういう意味での等身大の男性は求めてない。

 あとは音楽の使い方。懐メロを盛り込む演出を他でさんざん見たので、「またか」となった。

 ただ、周りの観客が楽しんでいる様子はとても伝わってきた。
 座席で身を乗り出してるような人も視界の端でとらえた。
「そうそう、あのステージのこの仕掛け、乗り越えるのに何度もやり直して。大変だったんだよね」
と言わんばかりで、本当に夢中で見てるのが伝わってきた。

 世界中にプレーヤーというかファンがいて、そのファンに向けて作られた映像だと思えば、なるほどそういう切り口なら私がハマれないのは仕方ないのだと納得がいく。

 世界規模でキッズの心を掴んだゲームだから実現できた作り方って感じがした。



2023-09-12

20230428 聖闘士星矢 The Beginning

 原作漫画は読んだことがない。
 アニメは子供の頃にテレビ放映していたのを見た記憶が少しだけある。アテナが地下牢のようなところに閉じ込められて中に水が溜まっていくシーンが妙に艶めかしく見えて、そこだけ鮮明に覚えている。

 ほぼミリ知らなのが良かったのか(?)、違和感も拒否反応もなく観ることができた。 
 マリンさんの見た目が好き。

 大作かといわれるとそんなことはないし、かといって特撮ジャンルのVシネやオンデマンド配信よりはお金がかかっている感じはある。

 たとえば漫画原作の実写映画化が決まったとして、原作好きな人も映画好きな人も、期待と不安が入り交じながら、各々が「コレぐらいのクオリティだったらな……」というものを思い浮かべるものだと思う。
 その最低限の基準は超えていた気がする。
 可もなく不可もなくって感じだった。



20230421 #サーチ2

 邦題はサーチ2だけど『Search』の続きではない。肉親の失踪事件を解決すべく家族が孤軍奮闘する状況と、その様子がモニター越しに覗き見するような視点で描かれること、同じ国で起きた点は共通しているが、前作は予習しなくていい作りになっている。
 観る前は「モニター越しのシチュエーションって言うほどバリエーションあるか?」とも思ったし、実際無理があると感じる見せ方もあった。それでも、2は2で面白かった。

 PC世代の父親が年頃の娘を探すのと、スマホ世代の年頃の娘が母親を探すのでは、だいぶ様子が違ってくる。
 機器の扱いに始まり、入れているアプリもその用途も、デジタルネイティブだ〜! と驚きの目でもって見た。何でも使いこなしていて本当に感心する。若い子のほうがやっぱり勢いがあるし、親のパスワードを突破するのにためらいがない(笑)

 ちょっと頑張って調べれば対象のどんな事柄も分かって丸裸にできてしまう時代になったんだな、と思うと、なかなか怖い話だった。

 真相が明らかになって初めて「覗き見しているのは観客だけじゃなかった」と分かるのもまた怖い。



20230412 世界の終わりから

 「対象年齢∶思春期真っ只中の人」みたいなやつ。
 思春期というか厨二病の感性をもつ人向けというか。そういう気質があれば何歳でもイケると思う。

 学生時代にバトル・ロワイアルを夢中で読んでいた時の気持ちを思い出す。少し下の世代ならセカイ系がそれにあたるだろうか。
 フィクションを観る時くらい攻撃性を解放させてほしい。
 逆に言えば、そういう感覚が分からない人には「寒い」「イタい」類いのものかもしれない。分からない方が幸せなのかもしれない。

 私は好きだけど人にすすめるのは難しい。
 言及するかどうかは、きっと相手を見て考えてしまうと思う。



20230331 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

 冒険して、問題解決のために立ち上がる決心をして、ちょっとしんみりする時があったりもして、最後に一山越えたらサッパリ終わる。
 そんな娯楽らしい娯楽のちょうどいい映画が好きだ。去年だと『ザ・ロストシティ』とか。
 D&Dもちょうどいい感じで好き。

 もととなったゲームのことはほとんど知らなくて内容はチンプンカンプンだった。最初の鳥人間は「ジャーナさん」だと思いこんでいたし、パラディンが何なのかも分からない。テレビゲームが全部ファミコンだと思ってるお母さんくらい分かっていない。
 それでも、キャラクターやアイテムその他もろもろ専門用語が繰り出されるたび、どこか知らない土地を訪れたような不思議な魅力があって楽しめた。各人が言葉を言わされている感じがないので聞いてて心地がいい。

 エンディング中に変なタイミングで始まり変なタイミングで途切れる日本版主題歌(無理やりねじ込まれた感がすごい)とか、SNSでセクシーパラディンなるワードが一人歩きしていく流れに戸惑ったことも記憶に残っていて、外側の部分も含めてこの年の印象的な作品の一つって感じ。



2023-09-10

20230317 シン・仮面ライダー

  シン・ゴジラとエヴァで掴んだ客にサービスするどころかガンガン振り落としていったところに、物凄く「おたく」を感じた(しっかり振り落とされた)。


 でも怪作ほどリアタイできて良かったなって思ったりはする。劇場の空気感も思い出になるので。

 映画館で近くの席に友達と連れ立って来ていた男の子グループがいて、終わってから片方が

「なんか、ゴメン」

と言っていたのを私は聞き逃さなかった。



20230305 アラビアンナイト 三千年の願い

 キメキメのビジュアルの連続で、眺めているだけですごく楽しかった。
 あと、めちゃくちゃ泣いた。

 結局どっちだったのか? を考察して正解を見つけるような、謎解きとして読み解くようなタイプじゃない気がする。

 観る人に向けて、
「あなたにもこんな存在がいるのだと、信じてもいいし、信じなくてもいい。
 いるなら好きに名前をつけて愛せばいい」
と、あえて余白を残しておいたのかなあと思った。

 信じたい人の気持ちもわかるし、科学の正しさを通したい人の気持ちもわかる。幽霊なんていないよ、ただのプラズマだよと言われても、なら幽霊はプラズマでできているんだねと両方受けとめたい。
 今はスピリチュアルだ妄想だと言われているアレコレも、いつかは科学で証明できる日が来ると、自分ならそう考える。

 個人的には、彼女はあの選択をしたことで他者との関わりを断った・諦めたように見えた。
 頼れる先がないわけだから、全然ロマンチックな話ではないと思う。
 やりきれなくて泣いた。

 しかし彼女にとっては、物語と心中するのはむしろ本懐を遂げる想いだったかもしれない。
 髪型やファッション、自宅の内装を見るに、かなりこだわりが強い女性だった。あれ絶対メンドクサイ女だ。皆が選ばない方を選んで孤立した自分を誇りにさえ思っていそう。

 顔がティルダ・スウィントンだから映像として綺麗なのであって、実際こんな女がいたらかなりメンドクサイはず(笑)


2023-09-09

20230303 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

 ツイッターでフォローしていた人が試写会で観たとかでめちゃくちゃ推してて、「この人がそこまで言うなら……」で観てみた。


 銀魂みたいだなと思った。SF+お下品+映画パロディ+所帯じみた風景+人情モノだったので。通った作品の違いからハジケにたとえる方もその頃多く見受けられた。ボーボボは知らないが言わんとしていることは伝わる。観てると気持ちが小学生に戻ってしまう。


 家族であれ知り合いの人であれ、困っている相手に対して何ができるか? と考えた時、自分などはもう面倒くさくなっちゃって、「正解が分からん」「他にうまくやってくれる人がいるだろう」「ちょっと様子見しよう」などと言いながら、何もしない事がほとんどだ。

 ここぞという時にフザケずに、彼女のような「見捨てない」という大まじめな選択ができるだろうか。



20230222 ベネデッタ

 観ようと思った理由:エッチそうだったから。


 現代人からしてみれば「これは典型的な何かの人格障害だな」で片付けてしまえるものだろう。

 そういうのを知った上で観るとクソ女だけど、彼女は他者を顧みることが全くない割にしかし天罰が下らなかった不条理な存在で、いったいどの神様に愛されていた女なのかと不思議な気持ちになった。


 でも、あそこまで自分を貪欲に信じられたら怖いものはないだろうなとも思う。

 絶対に真似なんかしたくないけど、強い女にはこんなパターンもあるのねと。参考までに。



20230203 ノースマン 導かれし復讐者

 洋画の予告をイチ早く見たくてユーチューブで 漁っていた時期がある。検索ワードに「movie trailer」とか入れたりして(英検4級)。

 ノースマンもその流れで見つけて、何喋ってんのか分からないけど重苦しい雰囲気にすごく惹かれた。キャストも豪華、アニャ・テイラー=ジョイ好きなんで、日本での公開があるといいなと期待していた。

 本予告で、のっしのっしと歩き、素手で敵を殴り倒す(打撃でよくあるドスッという重低音の効いたSEも標準装備の)主人公に、「アクションは鈍重そうだな」とは思ったものの……アニャ・テイラー=ジョイが出るなら観よう、みたいな。


 実際観てみたら思ってたのと違ったけど、面白いは面白かった。

 アクションを求める人にはおすすめしないが、時代考証頑張ったんだろうな、みたいなやつ。

 世界を創ったのが神様だと信じられていた時代に生きた人間の感覚ってこんなだったのかなあ、と思いを馳せたりするのにいいのではないか。

 神話とかまじないとか、そういうの好きな人はいけるはず。逆に言えばそっち方面の教養がないと何してるんだか分からなくて置いてきぼりを食らう。しかし血なまぐさい描写がまあまああるから、ファンタジーが好きなだけではキツイ気もする。

 この作品の需要がどこにあるのか分からない。


 でも雰囲気はかなり好き。話はフツーだけどめっちゃ画力の高い漫画みたいで。



20230106 カンフースタントマン 龍虎武師

 去年はあまり映画館に行けなかった。記録を見直してみると比較的少ない。

 その中でも特に気に入って複数回観た作品の一つが『マッドゴッド』で、2回目鑑賞時の予告で『カンフースタントマン』を知った。


 私は80年代生まれでアクションスターといえばシュワちゃんの印象が強い。テレビで頻繁に再放送をやっていたからだ。香港アクション映画も再放送はされていたが、ジャッキー・チェンの主演作をちょっと見たことがある程度だった。

 直撃したのは自分より一回り上の世代だろう。

 ただサモ・ハン・キンポーだけは、たまたま学生時代に部活の先輩から「サモ・ハンに似ている」と言われていたため知っていた。

 本作で動くサモ・ハンを初めて見た。


 取り扱う題材が体を張ったアクションだから、差し挟まる映像がいちいちとんでもない。

 ドキュメンタリーと聞くと証言をまとめて歴史を追う淡々とした映像ってイメージがあったのだけど、思っていたよりかなり緊張感があった。物理法則をいやでも意識させられる。

 危険そのものを目で楽しむ感じで、映画というよりサーカスを見ている気分。

 あと、これを「かっこいい」と言ってはいけないのかもしれないが、男が腹をくくる瞬間について語られている場面はグッときた。


 その時代の泥臭く危険きわまりないやり方は無理だとしても、なんだかんだ体を張った映像は作られ続けるのだろう。

 今の後継者たちが、未来では、全く新しい様相のアクションを生み出しているのかもしれない。