2024-10-22

20240724 (字)デッドプール&ウルヴァリン

 デッドプールの1作目が大当たりして以降はライアン・レイノルズのノリがだいたい同じに見えている。ピカチュウにせよGUYにせよ。

 際どいジョークで喋りまくる、映画パロディやメッタメタな中の人ネタ・時事ネタをこれでもかと盛り込む、懐メロをやたら流す。お客さんの目線をとてもしっかり意識されていて「裏切らない」人だなあと楽しく鑑賞しつつ、似たりよったりな印象も受ける。

 デップーも3作目だし、またいつもの要素が同じように出てくるんならもういいかな、でも予告のアクションは面白そうだし一応観てみるか、みたいな感じだった。


 ライアン・レイノルズのノリは相変わらずだったけど、今回は彼の横にウルヴァリンが常時ムスーッとした顔で立っていたのが良かった。両者の温度差からくるメリハリがあって。


 話のほうはロキ見てないとよく分からない作り。しかしデップーはメッタメタな映画で考察は不要というか、現実のコッチ側の出来事が引き金となってユニバースが増えてしまったのが可笑しかった。

 (大人の事情で配給がディズニーに変わり)映画内の世界線が分岐、FOX軸のほかにユニバースの番号が異なるMCU軸が新たに現れる。FOX軸のデップーやX-フォースの面々のエピソードは今後描かれることはなく、静かに消えていくことが確定。

 この何も起きない・描かれないFOX軸の世界が数千年かけて終わるのをただ見守るという任務についたパラドックス氏だったが、退屈な仕事に嫌気がさしていた。

 そこでアベンジャーズに入りたがっていたデップーだけをMCU軸に勧誘、FOX軸を壊す手伝いをさせようとして……みたいな流れ。

 全編通してサービスサービスゥ!!!! って色んな場所で戦闘にギャグにまた戦闘にと画面映えする描写が勢いよく繰り出される半面、各パートを結ぶための繋ぎの展開はけっこう雑に片づけられていた気がする。


 サプライズ要素の数々に関しては、アメコミ映画の外側のエピソードを知らなかったため、驚くべきであろう部分で驚けなかった。後から解説を読んでいかに感動的なシーンなのかを知った、みたいな箇所は多い。


 それでも何だかんだ盛り上がって、結局トータルで3回観た。



2024-10-21

20240713 【極爆】マッドマックス 怒りのデス・ロード

 SNSを利用して映画について情報収拾してると必ずといっていいほど目にする、「立川の爆音上映」。

 ずっと気になっていたけれど、立川という謎の土地への先入観があって行ったことがなかった。ものすごく辺鄙な所にあると思い込んでいた。

 フュリオサ公開でデス・ロードの再上映が決まり、晴れて爆音童貞を卒業してきた。


 ファーストインプレッションは「ドリンクでかくね?」。まるで珈琲屋OBだ。OBだと埼玉の人にしか伝わらないか…でもそれくらいドリンクの大きさが印象に残っている。


 爆音上映、大音量と重低音の厚みに驚いたのは最初のうちだけで、本編を楽しんでいるうちに重低音のドスドスいうのが却って気になってしまった。

 それだけ本編が面白かったと思えばいいか。


 立川からはその日のうちに無事に帰ってこれた。



20240706 長岡大花火 打ち上げ、開始でございます

 タイトルは花火大会だけれど、打ち上げを開始する“まで”の部分が全体の6割ほどを占めていて結構ボリュームがある。

 まずは長岡のなりたちを学ぶところから始まる。そこから?! と面食らったが以降で歴史と花火大会が密接に関わってくる部分があるため外せないみたいだ。

 戊辰戦争、米百俵の精神、山本五十六、空襲、シベリア抑留などを学び、震災の被害までを振り返る。

 その歴史を踏まえて、慰霊・鎮魂・平和への祈りといった側面をしっかり見せつつ、当日の花火大会を迎えるという構成。


 花火は終盤30分で画面に収まりきらないほどの迫力で披露された。

 音楽もあいまってとても感動的。


 待ちに待った花火大会パートが大変感動的でそこは良かったんだが、本編で気になる箇所もなくはなかった。

 全体的にテロップが下段に小さく表示されるのが見づらい。

 それとロシアでの花火大会が見るからにイメージ映像なのにことわり書きがなくて誤解を生みそうだった。

 中盤の劇の録画も長すぎると感じた。先の大戦の悲劇を繰り返さない~的なメッセージに重点が置かれた、学生さん達による劇のダイジェストが流れるのだが、おそらく全演目を公平に見せようとして切れなかった事情があったのだろう。変に長くて浮いてしまっていたように思う。


 花火大会の映像をただ流すだけではアッという間に終わってしまいそうだが、その土地ならではの要素を盛り込もうとするとノイズにねりかねない。

 地域おこし映画も難しいものなんだなと感じた。



2024-10-16

20240705 フェラーリ

  アダム・ドライバーがオールバックにすると雰囲気がだいぶ変わってて驚いた。この作品の予告は頻繁に目にしていたのに名前が出るまで気づかなかった。アダム・ドライバー凄い。私の顔認識能力がおかしいだけか。

 アダム・ドライバーが大変な目に遭う映画は大好きだけど(ちいかわ的な意味で)、本編の9割くらい人生の艱難辛苦で埋め尽くされた伝記映画を観るのは初めてで、かなり消耗した。


 会社は経営難。

 金銭面で厳しく意見してくるヨメ。

 愛人は隠し子の将来について答えを迫ってくる。

 レースで勝利を収めれば顧客獲得に繋がるはずと試験走行を重ねていた矢先、運転手が事故で死ぬ。

 後から入ってきた人気レーサーも、沿道の観衆を巻き込んでの大事故で死ぬ。……ここの場面はヘタなホラーより凄惨な「死」を見せるから、グロとか死体が苦手な人に向けて前もって注意喚起が必要なんじゃないかと思った。


 にっちもさっちも行かない状況に追い込まれ、それでも、主人公はその時その時で優先順位を決めたり答えを出していく。答えというか落としどころを探すような感じか。それで迎えた結末だって、一部の女性からしてみれば「男にとって都合良すぎで有り得ない」と爆発しかねないものではある。


 百点満点の正答や模範解答みたいなものは無いのだと分からせてくる、生々しい映画だった。




2024-10-15

20240531 マッドマックス:フュリオサ

 なんど予告を見てもピンと来なくて、でもアニャ・テイラー=ジョイが出るしイモータン・ジョーも登場するなら、という事で、ポイントを使って観た。

 もしかすると、クリヘム(というかクリヘム出演作)が自分には合わないのかもしれない。

 車や登場人物のデザインこそデス・ロードよりもおとなしめだが、オーストラリアの大地で繰り広げられるハードな物語なのは変わらず、乗り物アクションとしても物理的な危険を感じられて面白いは面白かった。
 しかし、繰り返し観たいというほど盛り上がりもしなかった。
 ディメンタスのキャラがどうにも引っ掛かってしまう。

 クリヘム演じるディメンタス将軍は、無理して狂人やってる感じ。デス・ロードのようなマッドに染まりきった世界に浸りたくて観に行った者としては、演者ご本人の人の良さそうな雰囲気も含めて何かあの無理してる感じが余計なものとして映った。
 あれがもし「他のヤカラより強いには違いないがイモータン・ジョーほどではない」と言いたくてのキャラづけだったのだとしても、本作にはハマれなかった。

 それと、ジャック(中盤から出てくるウォー・タンクの運転手。フュリオサがシタデル内で唯一信用した男性)のくだりがやたら長く感じられて、気分が中だるみしてしまった。

 最後のあのオチは好き。
 壊すよりも創ることのほうが、何であれ難しいなと思った。



2024-10-13

20240525② ソイレント・グリーン《デジタル・リマスター版》

 検索するとサジェストでネタバレ食らうので有名ってイメージで、作品名と肝要なポイントだけは知っていて、観る前は大変おどろおどろしい想像をしていた。
 劇中の未来では貴重になってしまった食べ物を、おじいちゃんがそれはそれは美味しそうにいただく姿がとっても可愛い映画だった。
 
 この感想をまとめているのは2024年の10月上旬で、ちょうどニュースではスイスの「サルコ」の使用が中止になったと報じられている。
 『ソイレント・グリーン』には、サルコよりも立派な装置が登場していた。
 至れり尽くせりの演出に包まれて死出の旅へと送り出してくれる場面はちょっと感動的ですらあった。
 少なくとも終活用マシンについては時代が追いついた。演出しだいでは装置を使うのもアリかな……なんて思いそうになる。

 この先やって来るかもしれない食料難の解決法に、原材料不明のあやしいシャキサクという選択肢が挙がることも、あのおじいちゃんが安らかに逝く場面を見た後では「絶対ない」と言い切る自信がなくなってくる。

 味が良ければいけそうな気がする。



20240525① 関心領域

  アウシュビッツ収容所のすぐそばに建っている家の話ですよと宣伝されていて、さぞかし暴力的な場面でも描かれるのかと思っていたら逆だった。

 素敵なおうちに住み続けるためなら“隣”で何が起きていようが関心を持たない主婦の話。意志が強い。

 現実を「見ない」話だから、ナチスがやってきた残酷な行為の数々も壁一枚はさんだ見せ方になっている。文字通り壁づたいの銃声と悲鳴だけ。間接的なのが意図したことなのは分かる。それがただひたすら続くので、とにかく尺が長い。

 奥さんにとっては、あの音が続くかぎり素敵な家に住んでいられる。この長い尺もとい長い日常がいつまでも続くのかーと、旦那さんと同じ鬱屈を感じさせられた。

 ナチスといえば普段『武器人間』とか『オーヴァーロード』みたいなものを好んで観る人間にとってはグロがないから物足りない。映画館で観たいものが偏っているため、不意打ちでアートを食らうと戸惑ってしまう。これも勉強だと思って最後までじっとしていた。


 つまらなくはないんだけど、この手の映画はテンションが上がらない。



 

20240426 ゴジラ×コング 新たなる帝国

 前作『ゴジラ×コング』はオープニングでもう「これはプロレスですよ」と言い切っていたので、ああこれは深く考えなくていいやつなんだと、ゆるく鑑賞できた。

 くせの強すぎるドハゴジにおいてゴジラはまるで宗教上の神のような扱いで、崇拝の対象として描かれる。

 かたや髑髏島出身のコングだって島の神様みたいな存在ではあるけれどアニミズムとかそっち寄りだし、小さな女の子と手話でコミュニケーションがとれる、強くてかっこいい、かつ人間くさいヒーローとして活躍している。

 タイプの違いすぎる2作の主人公をぶつけて何が起きてしまうのか? 半信半疑で観た前作は、「怪獣以外の脅威を出現させてゴジラとコングを共闘させる」という方法でそのあたりを解決していた。


 喧嘩する相手はゴジラとコング次第でいかようにも決められる下地がこのときできたのかもしれない。続編はさらにプロレス化が進行した。今度はタッグマッチだ。

 コングパートではコング自身のルーツを掘り下げながら次の対戦相手スカーキングと遭遇。ゴジラはゴジラで、でかい怪獣を見つけてはシメて回る。最後は2対2の試合にもつれ込む。

 プロレスするのは絵的に映えるから良いなあと思いつつ、やはりゴジラが強すぎるのか、コングに合ったレベルの敵モンスターをデザインするのが難しそうな印象を受けた。特に今回は敵も大猿で、性格面でコングと対比させていても見た目は被ってしまう。直立二足歩行する類人猿のケンカの延長にすぎない。スカーキングが街を破壊する前に決着がついてしまったのは、壊し方がコングとカブるからではないだろうか。

 モンスターのデザイン面でもっとブッ飛んだものが登場して欲しいと思ってしまった。


 大きくなったジアちゃんとスクリーンで再会できたのはすごく嬉しい。なんか親戚のオバチャンみたいな気分で喜んじゃった。



2024-10-06

20240419 陰陽師0

  新作映画が予告で気になったとしても、すぐに「観てみよう」とはなりにくい。まず監督と脚本が誰なのか調べて、その方が過去に手掛けたタイトルを参考に観るかどうか決めている。過去作をもとにすれば自分に合う・合わないの予測がつけやすいからだ。

 『K-20 怪人二十面相』は当時楽しんだ記憶がある。私はたぶん、分かりやすい話に派手なアクションで大勢の登場人物がワチャワチャしてる映像作品が好きなんだと思う。教養を求められる高級レストランと、何も考えずに食べられるファストフードと、褒めたり感謝を述べなければならない手料理があったら、ファストフードを選びがち。

 0も「分かりやすい話・派手な動き・登場人物がワチャワチャしてる」点で共通している。

 よって自分の中では、0に関してはあくまでK-20と同じカテゴリとして、旧作の野村萬斎主演の『陰陽師』とその続編とは別のベクトルで楽しく鑑賞した。

 他の映画なら『47RONIN』に近いと感じた。漫画ならフジリュー版封神演義みたいなノリというか。


 気になる点は晴明のキャラだろうか。

 映像が全体をとおして少年漫画っぽい作りで絵的に派手で見応えがあるのは確かなんだけど、主人公は冷めてて何考えてるのか分からないクール系(ナルトかサスケならサスケ的な?)に寄せられていたように見える。派手とクールのすり合わせが難しそうな印象を受けた。主役の俳優さん、どちらかと言えば信や杉元佐一の印象が強かったし……。

 性格の面で対称的な位置づけで博雅がいてバランスをとられてはいるが、晴明のクールさが鼻につかないでもない。

 博雅をああいうキャラにして、邦画について回る恋愛要素を主人公以外のキャラクターに振って回避しているのは、上手いやり方に見えた。






2024-10-04

20240412 オッペンハイマー

 思ったより渋いなあ、と思った。

 ノーラン監督に対して「作りたい映像に合わせてお話を作る(見た目の派手さ優先でお話は二の次)」みたいな勝手なイメージを抱いている。多分IMAXカメラを肩にかついだジャケット姿の写真に引っ張られてる(笑)。

 それでオッペンハイマーも、実際に落とす場面でも詳細にやるのかしら? なんて想像していた。去年の夏頃だとまだ日本での公開がハッキリしないままだったのもあって余計に、映像的に何か日本人が見たらマズイもんでもあるのか? と考えてしまった。

 観てみたら何てこたない伝記映画だった。

 広島と長崎に落とす場面は特にない。なかった事に不満もない。わざわざ凄惨な描写を見せずとも、トリニティ実験が成功した(=後戻りできなくなった)、歴史の転換点を置かれたってだけで充分だった。

 でも、アメリカでバービーとオッペンハイマーが大ヒットしたのが何故なのかは、観てもよく分からなかった。伝記映画と聞いて思い浮かべるものよりもエロシーンが多い印象はある。主人公に愛人が何人もいて劇中でヤッてる場面が何回も挟まるので。

 おっぱい目当ての人が映画館に押し寄せたりしたんだろうか。



 去年8月4日から5日にかけて広島の平和記念資料館を見に行った。この映画がキッカケで(観れるかどうか分からないうちから)いろいろ予習しておこうとなったからだ。

 式典の前日というタイミングだったゆえ目にしたものも色々あった。地元の学生らしき制服姿の子達が千羽鶴を抱えて納めに来ている様子だとか、会場設営やカメラの準備をするスタッフの人、あと見るからに要人って感じの外国人が側近を連れて歩いてるところなど。ドームを間近で撮影しているTVクルーもいた。

 オッペンハイマーの予習になったかといえば微妙だけど、その年の11月に観た『ゴジラ-1.0』をよりじっくり体感するのにちょうどよかった。


 鑑賞前に読んだものを以下に控えておく。本を読むのがめちゃくちゃ遅いから、この3冊に数カ月かかった。

「原爆ドーム 再生の軌跡」著:古川修文 南々社

「原爆を盗め! 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられた」著:スティーヴ・シャンキン 訳:梶山あゆみ 紀伊國屋書店

「ケミストリー世界史」著:大宮理 PHP文庫

 原爆ドーム~はあのドームが建てられることになった経緯から広島平和記念公園一帯のなりたちまでの一連の流れを知るのにとても良かった。文章も分かりやすい。

 オッペンハイマーの予習には原爆を盗め!~は合っていた。開発資料が流出した話をよく知らずに観たら映画の後半ワケわかんなかったと思う。

 ケミストリー世界史では兵器開発の歴史を大まかに知ることができた。ミリタリーの解説はあんまり細かいとシンドイので、かいつまんで軽めの説明でお願いします、という自分のような人にとってはとっつきやすい作り。マンハッタン計画の説明も少しある。劇中に登場したフェアゲルトウングスヴァッフェン2号ことV2ロケットもこの本で知った。

 あとはウィキペディアから「トリニティ実験」「ガンバレル型」「爆縮レンズ」「リチャード・P・ファインマン」のページは事前に読んでおいた。ボンゴ(笑)



2024-10-02

20240406 アイアンクロー

 後半のタイトル回収シーンが熱い映画だった。

 まず、とにかく見た目の説得力がハンパない。
 俳優がプロレスラーを演じるために役作りで屈強な肉体に鍛え上げた、と言われて想像する姿の数倍デカい人達が出てくる。王騎将軍のたくましい二の腕にウットリとかそういうレベルじゃない太さに、役作りのこだわりへの感嘆を通り越して「そこまでしなくても」と若干引いてしまった。
 序盤で兄弟が朝食をとる場面もなんか凄い事になってて、ダイニングテーブルに並べられたパンやらベーコンやら卵だのの量が給食一クラス分みたいなボリューム。

 そして言うこと為すことがいちいちアレな親父さんに、日本人の感覚からすると何か違和感のあるお母さん。
 このお母さんが平均的なのかどうか身近に敬虔なクリスチャンがいないから分からないけど、なんかこの家庭は父親だけの問題じゃなさそうだなあ、と思った。

 鑑賞前にウィキペディアでざっと家族構成だけはさらっていて、実際は6人兄弟のところを5人の設定にまとめられているのは把握していた(尺の都合だろうか?)。それでも、こう立て続けに亡くなる過程を見せられると、たしかに死にすぎな気がする。

 呪いじゃないなら何がおかしかったのか。
 多分だけど、弱りきった男にたいするフォローの仕方を家族の誰も知らなかったのが災いしたんじゃないだろうか。
 そもそも親父さんがいろんな意味で強いため、「弱る」という事がない。
 お母さんはとてもしっかりした人。いわゆる母性で包み込んだり寄り添ったりするタイプではない。あの親父さん相手ならそれで足りたのだと思う。ただ、兄弟たちがシンドイ時にも毅然とした態度をとったのが、結果裏目に出てしまったのかもしれない。
 親父にしごかれる地獄の日々を一緒に耐え抜いている兄弟の結束しか心のよりどころがない。
 屈強な肉体なのに、というか、屈強な肉体だから、崩れたときの落差をより強く感じる。

 彼らの中でも次男のケビンが最後まで生き残ったのは、優しい彼女とつきあえたのがやっぱり大きいと思う。

 オチは何か「男だって泣いていいんだ」って感じで普通。
 そんな普通のことが普通にできるようになるまでがケビンにとって物凄く長い道のりだった、という話。


 感動的なラストが映し出されるなか、そういえば子供の頃テレビで見た大仁田厚は泣いてたなあ、有刺鉄線デスマッチすごかったなあ、などと思い出してしまい、最後の最後で余韻に浸れなかった。



2024-09-25

20240317 デューン 砂の惑星PART2

  デューンは衣装目当てで観に行っている。

 あとは旬の役者さんが贅沢に投入されるからソレ目当てで。金かかってんなあと思いながら観ていた。

 オースティン・バトラーが出ると告知があって楽しみにしていたら、噛ませキャラのような扱いであまり見られなくて残念だった。

 しかしここまで豪華すぎると、親族どうしの設定で「何処そこの血筋が~」と言っていたりするのに顔が全然似ていないという現象が起きてしまっていて、髪が生えてる側の家系も何かしら統一感を出せる要素を加えてもらえないものか、と思わなくもなかった。

 ストーリーを追うことにはこだわらずに観ているシリーズなので、続編も衣装とキャストを楽しみにしている。



2024-09-24

20240309② 羽生結弦 notte stellata 2024 ライブ・ビューイング

  映画館での上映予定時間が16:00~19:00と長めで始まる前はちょっと怯んだが、実際は途中20分間の休憩(兼整氷タイム)込みで18:15閉幕だった。19時までというのは進行が押した場合の余裕をもった枠だったのかもしれない。

 尺が短いように思われるかもしれないが、公演の内容はかなり充実していると感じた。

 出演するスケーターが多いしとにかく豪華。それぞれの強みを生かしているから幅広い演目に触れることができる。だれが観ても何かしらお気に入りの作品が見つけられるのではないだろうか。私は宮原知子さんのコレオにとても惹かれた。

 主役の羽生結弦は「ザ・王子様!」って感じ。テレビで試合しか見たことがなかった自分にはあの映像演出が見慣れないもので、何だかこそばゆくて落ち着かなかった。彼のファンはあれくらいキラキラしたものが丁度いいんだろうか。


 ゲスト出演で言えば大地真央が大活躍していた。後半に至っては普通にステージで歌って踊る大地真央が見られた。もはやスケート関係ない。スケート観に行ってレビュウが始まるのは、なかなか不思議な鑑賞体験だった。

 フラフープを回しながらスケーティングを披露する女子スケーターさんもおられて印象的だった。のだけど、アレはストーリーを絡めた演出とかできなかったんだろうか。照明とフープの色が変わるだけだと惜しい感じもした。


 アイスショーは以前べつの団体の公演を長野で観たことがある。宿泊地を気にしつつ現地まで移動して鑑賞するのもそれはそれで良かったが、言うて映画館のほうがチケット代は手頃だし、画面が大きくて見やすいし、寒くないし座席がふかふかでケツも痛くならない。

 特に推しがいるわけでもないので映画館でも充分楽しめるなーと今回思った。


 

20240309① 愛と哀しみのボレロ

  面白かったけど、登場人物が多すぎて途中から誰が誰だか分からなくなってしまった。


 ジョルジュ・ドンがボレロを踊る映画なのは知っていたのだけど、

「バレエダンサーのルドルフ・ヌレエフをモデルにした架空のダンサー、セルゲイ・イトビッチ役を演じるジョルジュ・ドンがボレロを踊る」

 というややこしい設定で最初は混乱した。どこからどう見てもジョルジュ・ドンだし、そもそもボレロの振付けはヌレエフじゃなくてベジャールだし、ヌレエフの伝記映画だと『ホワイトクロウ 伝説のダンサー』を観たことがあったものだから亡命シーンの演出が違いすぎてそこでも驚いてしまう。

 ジョルジュ・ドンがやるとかなりアクロバティックな亡命になるんだな。




20240301 アーガイル

  割と最近まで映画監督のマシュー・ヴォーンとバレエ振付家のマシュー・ボーンを混同していた。映画館で『キングスマン』等の予告編だけは目にしていて、振り付けしながら映画も撮れるなんて凄いなあって……

 こういう時ボッチでよかったと思う。勘違いで人前で恥をかかずに済んだ。


 なにげにマシュー・ヴォーン監督作は一つも通ったことがなかった。

 SNSでファンアートをよく目にしていたからかもしれないが、なんとなく「女性ウケが良い」イメージがある。キャラデザと色彩が特徴的で頭に残りやすいビジュアルを作れる人なのかなあ、と。


 大人気スパイ小説の結末を書くのに煮詰まって旅に出た女性作家が、「小説の内容がリアル過ぎるから」という理由で本物の諜報機関に襲撃されてしまう、というお話。

 彼女の書いている物語は劇中でも映像になっているのだけど、スパイものに限らず、小説を読んでる最中は勢いで受け入れたが画づらにされると中々ヘンなことになってる瞬間があるのは納得だった。マオカラーで変な髪型でスパイとか、そのまま映像にしちゃダメなやつ(笑)。

 主人公の鈍くささが何やかやキュートだったし、彼女を守るサム・ロックウェルの大人の色気が堪能できたのもあって大変好ましく感じた。

 見た目やキャラの動きだけでなくアクションもたくさん観られてよかった。

 終盤の「アイススケート」の一連の動きが爽快で忘れられない。一体どんな競技なんだ、さすがにそれで行くのは無理があるだろ! って突っ込みたくなったけど、やりたい事は分かるしじっさい映像にされたら面白かった。このシークエンスだけで元がとれたと思う。


 クロスオーバー化されると追うのが面倒くさくなるので「単発で観てみたら楽しかった」のままでいて欲しい気もするが、今後どうなるんだろう。



2024-02-26

20240223 コヴェナント 約束の救出

 TOYOTAのピックアップトラックが映るたび何とも言えない気持ちになった。

 中東での軍事行動中に文字通り命がけで死地から救ってくれた通訳の男を、ジェイク・ギレンホール軍曹が助けに行く話。

 戦闘シーンより何より、
「通訳の男がいかに大変な思いをして軍曹を救ってくれたか」
の描写がこの物語のキモ。
 これが、もう、それはそれは丹念に、時間を割いて描かれている。
 その説得力たるや。

 なんなら通訳の活躍をドンパチより徹底的にやっている。もはや戦闘シーンが弱いとすら感じる。
 最後の銃撃戦だってもっとスリリングに描くこともできただろうに、かなり大雑把に片付けられていた。
 追ってくるタリバンの戦闘員も、「逃走中」の終盤でハンターを大量投入するような勢いで補充されていくものだから、まるで100人スミスとかコント番組やマッドマックスを見ているようだった。旗か、旗が悪いのか。
 同じく実話ベースで中東でドンパチするものなら『アウトポスト』のほうが、まだ絵的に命の危機を感じやすいかもしれない。

 それだけ通訳の男がよく頑張ったから、誰が見たって「アイツを助けに行かないと死んでも死にきれないヨ!」と思わされるのだけど。

 何より生還した軍曹自身が、家族のもとへ帰ることができたのを喜ぶどころか、「呪い」と表現して苦しんでいるところが凄まじい。

 良し悪しはともかく、それくらい通訳に比重が置かれていた。

 思い返してみればギレンホール軍曹、撃たれてからは特に何もしていない。本編のうち3割くらいは運ばれてるだけだった。
 通訳の男に助けられ、嫁に助けられ、(借りを返してもらったカタチとはいえ)上官に助けられ、パーカーにも助けられ。
 なおかつ異様なエイム力に助けられている。

 何か色々おかしなところがある映画だった。


メモ①
 実話ベースの中東軍事モノ(?)を2〜3作観てみたら、空爆で決着をつけるものが続いた。
 そのせいか似たりよったりな印象を受けるというか、飛行機が出てくると終わりの合図に見えてしまう。

メモ②
 字幕は松崎広幸さん。
 専門用語には説明が添えられていた。
(ゴールデンカムイでアイヌ語の意味を同時に表示していたのと同じような配置)
 ミリタリーに疎いのでああいった記載はとても助かる。



20240211 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人

 ジョニー・デップ裁判後の復帰作、とうたわれていなかったら観てなかったと思う。

 豪華な衣装とセットで繰り広げられる、お金のかかった昼ドラって感じ。
 きらびやかな景色を史実とか気にせず見たい人には合っているのではないか。
 観客の男女比は、私が観に行った回は9割女性だった。
 ヴェルサイユ宮殿も清潔感にあふれていて凄くきれいだった。

 フランス革命と聞いて思い浮かぶような血なまぐさい描写は一切ない。ルイ15世暗殺未遂の罪によって八つ裂きの刑に処されたロベール=フランソワ・ダミアンも、死刑執行人のシャルル=アンリ・サンソンも、ギロチンも出てこない。

 『ナポレオン』を観た後での鑑賞だったのも落差に繋がったかもしれない。
 ナポレオンでは冒頭でマリー・アントワネットがギロチンにかけられる。そのシーンが記憶に新しく、本作でたいへん可愛らしいマリーが登場した瞬間「ああ、この子が最期ああなっちゃうんだ」と気の毒になってしまった。
 鑑賞した順番のせいで、マリー・アントワネットのほうがデュ・バリー夫人より酷い目に遭ったイメージが出来上がっちゃってて参った。
 言うて己の境遇を選べなかった度合いで言っても、マリーのほうが可哀想な気がする。

 デュ・バリー夫人はある程度の年齢になってから自らの意思で宮廷に接近した人として描かれており、イマドキの言葉で表すなら、田舎の出身で上京後に歯止めが利かなくなったパパ活女子のような印象を受けた。
 豊かな暮らしを求める気持ちは理解できなくもない。生活の安定を求めて何が悪いと言われたら返す言葉もない。自分を貫いた女性のように見せようとする意図は察せられる。
 それはそれとして、たとえば子どもを可愛がる時のおままごと感とか、彼女が良い人認定した男性だけがやたらヒーローちっくに描かれたりしている点だとかが、言葉を選ばずに言えば年齢のわりに幼稚に見えた。ある意味それも彼女らしさなんだろうけど、観ててイラっとした。

 加えて、監督自らが主演という点も、正直イタいとしか思えなかった。
 しかし、後になって、監督自ら主演する作品って色々あるよなーと思いだした。タイカ・ワイティティとか、北野武とか。それと何が違うのか。
 思うに、ジャンヌ〜は内容がロマンスだからキツかったのではないか。知らん女の夢小説を読まされてるみたいで。

 あと、ルイ15世への想いの強さという意味でなら、もっと惹きつけられた人物がいる。ラ・ボルドだ。
 彼のほうがよっぽど国王に対する愛を持っていたように見えて良かった。

 この監督さんの見せ方も演じ方も、男の趣味も、何か合わないなあと思った。

 総じてデュ・バリー夫人を好きになれるポイントが見出せなかった。




2024-02-12

20240127 ゴールデンカムイ

 2023年中に『コカイン・ベア』で荒れ狂う熊を、『SISU』で不死身とあだ名された激つよ兵士を観てしまったので、金カム要素は充分満たされていた。
 比較してもしょうがないし普通に観よう、くらいのなだらかな気持ちで鑑賞した。

 見た目ではアチャ役の井浦新が一瞬の出番だったけど惹き込まれた。澄んだ眼をしながら何考えてるのか分からない、ヤベェ人の雰囲気があって好き。

 映像のほうは、構図まで原作そっくりそのままに再現されていたのが、驚きよりむしろ困惑してしまった。
 初登場時のキャラが立ってない尾形とか。
 わざわざクルッと回ってカメラに向かってから決めゼリフを言う土方歳三とか。
 原作既読勢が実写版をシビアに見る傾向があるのは色んな作品が映像化されるたびにSNSで目の当たりにしてきたし、私も思い入れのある漫画が実写化されてアレ? となったことがある。主人公の見た目が変わりすぎたという意味であれば『昴』とか。だから気持ちは分かるけど、ここまで「外すことが出来ない」みたいな空気になったんだな、と思うとビミョーな気分になった。アングルまで揃える必要あったんだろうか。

 とはいえ、そもそも扱われる要素が多岐にわたる金カム、どこを活かすか・どこを省くのかを決めるのが素人目にも難しそうな作品だろうに、できうる限り取りこぼさず活かそうとしていたのも伝わってきた。

 全体的になぞり過ぎな印象を受けたのは、「らしさ」を失わないためにこだわった結果なのかもしれない。と受けとめようと思う。

 主人公は声が高めなのと序盤でイケメン喋りしてるのが何か苦手だなあとはなりつつ、後半の
「ウンコじゃねえっつうの」
あたりは、心を開いた感じがしてホッコリした。



20240120 VESPER/ヴェスパー

 ほぼナウシカだけど凄い好み。
 虫がダメな人にはお勧めしない。

 舞台はなんか色々あって荒廃した地球。一部の富裕層だけが暮らせるコロニーの外で苦しい生活を余儀なくされている人々がいて、同じく外で生まれ育った少女が貧困から抜け出すために足掻く話。

 基本的な流れはポストアポカリプスものの典型だけど、用いられる舞台装置がSF超大作によくある無機物ではなく有機物で構成されているのが物珍しく感じられた。
 なんならヒロインの横にふわふわ浮いてる丸いやつもAIではない。高性能マシンに見せかけて、あれはただのお父さん専用無線機だ。しかも中をいじるとクチュクチュという汁っぽい音がする(どういう構造なんだ……)。
 そういう感じのモノは他にもまだあって、
・エロ同人に出てきそうなウニョウニョしたトンチキな植物たち
・おもに労働させるためだけにデザインされた、知能を持たず、痛めつけられても叫ぶことしかできない人造人間
・おもてなしの食事には貴重なタンパク源もといフレッシュなミミズを盛り付け
 などなど。
 出てくるものがことごとく生理的嫌悪に直結しかねない要素を孕んでいる。
 メイドインアビスとか好き好んで読むような人なら楽しめるんじゃないか?

 あと、こういうテーマを大っぴらに語った作品ではないけれど、女性の自立といった側面も描かれているように感じた。
 ヒロインのヴェスパーちゃんは、消息不明のお母さんのことを引きずりつつも食うに困らない生活を目指して植物の研究と創造にいそしむ頑張り屋さん。
 カメリアは元々依存体質っぽい女性だったが、自分に出来ることを考えて行動するに至った。当人にとっては悪手だしお話の勢いがあそこで失速した感は否めないが、彼女が自分で決めたという点が大事なのだと思う。
 ヴェスパーのお母さんも、理由こそ不明だが家族を棄てたのには何らかの覚悟があったと思われる。

 しかし、画で語るスタイルのため説明がほとんどないのが難しい。
 荒廃した地上におっ立っている廃墟が何なのか、あの死体はいつからああなのか、映画の最後はどうなったのか、BLAME! 並みに説明してくれない。

 何となくだけど、あれは
「一人の少女はやがて沢山の協力者と出会い、支えられ、新種の植物の創造にも成功し、コロニーの住人に立ち向かえるほどの力を持った女性に成長します」
と言いたかったのではないか。

 ほぼナウシカですね。



20240112 アクアマン/失われた王国

 ジェームズ・ワンが監督でもこういう時ってあるんだな、意外だなあ、と思った。

 ヴィランがぱっとしないのがどうにもこうにも。
 ブラックマンタがあまりに不甲斐ない。

 映像は「やりたかった事を全部詰め込んだんだろうな」と思わされる。イメージボード通りに作りたい! となるようなアイデアが沢山あったということなんだろう。良い悪いは別にして、思いつくのは凄いなあと思う。

 だけどCGパートの人間の動きがいかにもCGくさくて違和感も残る。
 どのキャラもスパイダーマンみたいにシャカシャカ動く。そこだけ水中の設定が抜けているんじゃないかというくらい、すっげえシャカシャカ動く。
 前作より物理的に一回り大きくなったモモアマンも、リアルは離婚騒動ですったもんだした嫁(でも降板しなくて良かった。どんな理由であれ途中でキャストが変わるのは嫌だ)も、作中でいちばん美人の母ちゃんも、やたらシャカシャカ動いている。

 あのシャカシャカした動き、大作映画というよりゲームのグラフィックにしか見えなくて苦手だ。
 何とかならないもんかなあ。




2024-02-03

20231229 アンブッシュ

 パトロール中のUAE軍がゲリラの待ち伏せ攻撃を受け、救出作戦が遂行されるもかなり苦戦してしまう話。
 砂漠迷彩の兵士と、砂と同じ色の装甲車が、見てて新鮮だった。
 
 登場人物のキャラとそれぞれの関係性の描写もそこそこに8割方ドンパチしてるミリタリーアクションだけど、戦況の変化がそのままドラマになっていて、密度は充分あると感じた。
 全員の顔が濃くて最初ちょっと見分けがつきにくい。

「子どもが誘拐されてテロリストとして育てられる」
「(反乱軍に捕まり)人質にされるのは何としても避けたい」
 ハリウッド映画ではなかなか聞けないセリフが飛び出すのも印象深い。

(追記)
 本作を鑑賞した日の夜、テキトーな店に入ってカツカレーを食べたら食中毒に。
 深夜に猛烈な吐き気に襲われ、小一時間おきにトイレに駆け込んでいた。
 4回目くらいからは胃液しか出てこなかったが、ウトウトしかけたところに胃のほうから「すみません、トイレに連れていってください……」と訴えてくるような状態。ひと晩で十回は吐いた気がする。
 嘔吐がおさまると今度はお腹が下った。
 水分を摂っても摂っても、そのまま尻から出ていく勢い。シャーッて。この間は排尿が全くなかった。
 これは内臓から何かを洗い流すモードなのか、人間の体にはこんな機能が備わっていたのか、なんか凄いな、などとボンヤリ考えた。
 どのタイミングからかは思い出せないが微熱もあった。
 水様性下痢がひとまず止まってから、ドラッグストアに経口補水液と胃薬を求めて徒歩で向かった。その15分ほどの道中でも一発吐いた。
 水、スポーツドリンク、明治の老人向け栄養ミルクなど色々な飲み物を試したが、1時間後には吐いた。無駄遣いだった。こんな事ならずっと水だけ飲んでればよかった。
 「ツイッターやってたら実況できたのに。アカウントもう無ぇんだよなあ」と悔やみながら、飲んでは吐いて下すのを繰り返した。
 症状は2〜3日ほどで落ち着いた。しかし年末年始は帰省も大掃除も初詣も断念。回復に努めた。



20231210 窓ぎわのトットちゃん

 映画化されると知ってすごく気になっていた。
 いわゆる「落ち着きのない子」を、アニメーションで(動画的な意味で)どこまで表現できるんだろう? という興味があった。
 映像のほうは体の動きというより具体的なエピソードが主で、それもまあ女の子にしては好奇心旺盛で活発なお子さんですね〜くらいの、微笑ましく感じられるところまでで踏みとどまっているように見せている。後から振り返ると「やっぱりとんでもない事してたなあの子」ってなるけど。

 小学校退学と聞くと何をやらかしたんだ、学校側は何をやっているんだとなるかもしれないが、現代ならあの状況は加配で先生をもう一人増やすべきケースなわけで、そりゃ一人担任じゃ無理だったろう。
 そんな昔の制度ではカバーしきれなかった子ども達を引き受けて、彼らが毎日元気に通えて次の日を楽しみに待てるような学校の存在は、親御さんにとっても救いだったに違いない。
 先生方のフォローの大変さは計り知れない。子ども達が自由にのびのびやっている影で、気づかれないように何処かで見守っていたとしか思えない場面がいくつもあった。

 ほかに印象に残ったのは、戦争が日常にもたらす色彩の変化だ。開戦以降の落差が激しい。
 とはいえ映画館の客の半分くらいは子ども連れで家族で観に来ていたから、色彩の変化で子どもでも何かしら感じ取れる分かりやすさはあっても、保護者の方が後で説明する大変さはなくならない感じ。
 大人から見ると下の子が生まれるあたりなんかスゴイ説得力を持っているんだけど、あのへんもどうやって説明すればいいのか悩みそう。
 各ご家庭の歴史認識と語彙力が問われそうだ。

 ラストの空襲シーンで重苦しさはピークに達し、近くの席のチビっ子が「こわい……」とこぼすほどだった。
 校長先生の目のとこ、きっとそのチビっ子には、戦争にたいする心の底からの怒りが、ストレートに伝わったんだろうね。

 戦争にかんする描写はグロはなく安心して観ていられるくらい抑えめだったけど、変なところで凝っていた。
 M69焼夷弾の機構がやけに細かく描き込まれていた。



20231208 ウォンカとチョコレート工場のはじまり

 お仕事、はたらく事について考えずにいられない映画だった。

 人を活かすも殺すもチョコレート次第という特殊な地域に一人の青年がやってきて、夢みたいな世界を見せることができるチョコレートを創り出して自分の店を持とうとする話。
 カネを通して描いたら生々しくなっていたであろう話もチョコレートに置き換えると素敵なファンタジーに見えるのだから不思議だ。

 ミュージカルは苦手なので、鑑賞前はちょっと不安だった。
 以前観たアナ雪やウエスト・サイド・ストーリーなどは、歌パートに入ると歯を食いしばっていた。
 登場人物たちは歌い出したくなるくらい感情が昂揚しているから歌うんだろうけど、正直、鳥肌が立つ。丸の内仲通りのイルミネーションにむらがるカップルの今にもおっぱじめそうな空気とか、インスタのポエムとか、知らない人のLINEのやり取りを、不意打ちで食らっちゃった時のような感じに近い。
 なんかもう「やめて」って感じ。

 ティモシー・シャラメが歌うさまも想像がつかなかった。
 どうしても、あの、ととのった顔立ちが先に来てしまう(インターステラーの影の薄い長男は除く)。
 そして始まっていきなり歌い出した。
 意外と聴けた。
 というのも歌声がソフトで、ミュージカルにありがちなエモーショナル爆発! ではなかったから。たんに声量がないのかもしれないが、ミュージカル苦手な自分にはティモシー・シャラメくらいの歌い方のほうがちょうどいい。

 話も面白かったし、ミュージカルだからと食わず嫌いせずに観てよかった。

 ただ、彼の創ったチョコレートでありえないことが現実に起きる表現として出てきた、無毛の猫がフサフサになるシーンだけはイカンでしょと思った。猫にチョコ食わせちゃ駄目だろう。



2024-02-02

20231201② ナポレオン

 冒頭のマリー・アントワネットが処刑される場でナポレオンが人混みに紛れているくだり、若かりし頃のはずなのに「なんか老けてんな」と思った。
 さすがに全部ホアキン・フェニックスだと序盤が老けすぎな気がする。

 お話は当人目線でザ・俺の物語! 俺の歴史!!って感じだけど、ハタから見ると男の生態ってこんなもんだよな~と、何かちょっと半笑いになってしまうような、英雄の殻の外から透けて見えるものまで含めて幾層も重ねてお出ししました、みたいな、凝った塗装という意味での濃さがあった。

 たしかに男の物語だった。よくも悪くも。



20231201① 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~

 12月1日(映画の日。安い)、ちょうど金曜日で観ようと思えば2本は行ける絶好の機会。

 前作では大いに笑わせてもらった。
 ただそれは自分が埼玉県出身者だからであって、冷静な判断はできていないと思う。

 じっさい2作目で滋賀県に舞台が移った途端、
「コレどこで笑えばいいの……?」
と戸惑う部分が多くなった。
 前作だって埼玉県についてよく知らない人から見たらそんな感じなんだろう。

 初めて部外者の気持ちで翔んで〜を観た感想は、金かかってんな〜! だった。画面の密度がとても高いように感じた。
 あと、明らかにアレと分かる工場のシーン以外にも、何かオマージュとかパロディをやっていそうな雰囲気は伝わってきた。映画詳しくないから元ネタまでは分からない。ただ、やけに印象に残るカットが盛り込まれているのだけは分かる。

 でも何だかんだ一番印象に残ったのは、杏が演じた“滋賀のオスカル“の美しさだった。



2024-01-02

20231124 サムシング・イン・ザ・ダート

 たまたま予告で気になって観ようと思っていたやつだった。

 ボロアパートの一室で起きた怪奇現象を、金のためにカメラに収めてドキュメンタリー映像に仕立てていこうとする男二人の話、としか言いようがない。
 ドキュメンタリー形式だから、どこからどこまで本当なのか、あるいは作り物なのか、最後まで分からないような。

 私は最後まで寝ずに観ることができたが、スヤスヤ寝息を立てている人も見受けられた。
 起伏がなくはないのだけれど……

 煙に巻かれるだけ巻かれてしまい、モヤモヤだけが残った。

 結局なんだったんだろう。