ディビジョンと呼ばれる地域ごとに所属するラッパーの兄ちゃん達のバトルを、「専用アプリで投票」することによって観客みずからジャッジするという、特殊な上映スタイル。
このジャンルについて全く知らないが、アプリの操作感に興味があって観てきた。
実は2試合目以降は観ていない。
途中でスマホ持ったままトイレに行ったら設定がクリアされてしまい以後の投票ができなかったため、集中力が切れてしまった。
アプリのほうは各バトルの投票の時間制限が10秒しかないのが初見にはなかなか慌ただしいと感じた。
選択肢で分岐する乙女ゲーを多数決でプレイするようなノリと言えばいいのか。
映画ではなく、公演と称したほうがしっくり来る。
このジャンルは女性オタク向けらしく、各キャラクターの顔がいい。しかもイケボで、脚も長い。どれくらい長いかというと、CLAMP作品とキャプ翼の中間くらいの長さ。
それぞれの登場人物は何らかの職に就いているが、この描き方もどこかオタクが好きそうな記号的なものばかりだった。
要するに現実味がないというか、清潔感に振り切った造形をしている。
あくまで彼らはラップができるイケメンであり、けして「闇金ウシジマくん」の登場人物みたいなのは出てこないし、現実のアメリカのラッパーのような荒っぽさもない(粗暴さという記号を持たせたキャラクターはわずかにいる)。
で、バトルシーンも、アイドルのコンサートと見紛うばかりの演出がなされていた。会場はどこかのドームか屋根付きスタジアムを模しており、ステージと花道が設置されている。
照明バキバキのドームコンサート風のステージを用意したのは、おそらくリアルの観客がペンライトを持って応援上映することを想定してのものだろう。物販に光る指輪なんてのもあったし。
それでいながら、各キャラクターのコールはレニー・ハート風のおばちゃんが巻き舌で読み上げる。このへんでバトルを意識させようとしたのかもしれない。
バトルの方法は一応ラップではあるのだが、こちらもCGアニメの特性を活かした視覚効果モリモリの演出で行われる。
ラップで発した音声を特殊なマイクが拾って、特殊なアンプ(?)が彼らの音声を何らかの技術で実体化、各選手のイメージに合わせた楽器や乗り物などの巨大なモチーフとテキストそのものがステージに浮かび上がる。
たとえるなら湿布のCMで岩のようなフォントの「肩こり」の文字がサラリーマンの肩にドシンと乗っかるようなものだ。イケメンが繰り出すので「肩こり」などは出てきたりしないが、ネオンカラーのテキストを顕現→相手にエイッと投げてぶつける、このようなものを主な攻撃としている。
まるでアイドルの持ち歌で格好いいラップやリリックを披露するターンを見せられるようなノリで、モチーフや文字をエイッエイッとぶつけ合う。
ラップバトルだけどマジのdisりではなさそうな…やっぱりそこも記号的に見えた。実際の歌詞ではきちんとラップバトルしてるのかもしれないが早口すぎて聞き取れない。
これをバトルと言われましても…って感じだった。
とは言え。このジャンルは女の子向けだ。
暴力が入り込む余地がないように作らなければならなかったんだと想像する。
普通の映画としてストーリーを作ってしまえば、決められた勝敗をただ眺めるだけになってしまう。ストーリーを作ることもある意味暴力になってしまう。
人によっては繰り返し鑑賞するのがオタクコンテンツだから、そうなると話の筋によっては自分の推しが何度も敗北する姿を見ることになってしまう。女の子は繊細だ。推しが勝てないところを見るのは嫌だ、となったら、ストーリーなんて作らないほうが良いだろう。
皆が公平に楽しめる、ストーリーという暴力をも取り払った映像作品。
その解が投票方式だったのだろうか。
誰も傷つかないものを創る、という意味では正解なのかもしれないなと思った。
「女の子ってここまで配慮せにゃならんのか」と驚いてしまったものの、オタクが金を出すものはコレくらい研究・マーケティングをしっかりとやって、見た目にもよく出来ていないと駄目なのだということが分かった。
総じて面白い体験ができたと思う。
(追記)
本作は封切りしてまもなく各劇場の投票結果がすべて公開され、どの映画館でどのような結果だったのか知ることができる。
どこそこの地域のシアターではこのチームが強い、といった傾向も目に見えて分かる。
観客が映像作品の結末をアレンジできて、箱(映画館)ごとに異なるエンディングを有している。普通の映画ではあり得ないことが起きていて凄いと思った。
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